量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ) の感想

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参照データ

タイトル量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ)
発売日販売日未定
製作者清水 明
販売元サイエンス社
JANコード9784781910628
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 物理学 » 理論物理学

購入者の感想

 学生とのゼミの教材としてこのテキストを使ってみました。著者のこだわりはわかるのですが、初学者には何を言われているのかぴんと来ない記述が多いと思いました。高度な内容を短い文章に押し込もうとされたようであり、こんな説明では玄人は満足せず、初学者には何を問題とされているのかさえわからないような、舌足らずの記述が散見されます。とくにダブルスペードマークの部分でその傾向が著しいです。例えばp.73の「ゲルファントの三つ組」「演算子の定義域の問題」などは、筆者のアリバイ作りのための、苦しい説明の例として挙げられるでしょう。また、p.45の「完全系」の説明では、線形結合の存在だけが要請されていますが、収束性まで言うのは難しいとしても、展開係数の一意性は要請しておかないと、物理的に見ても大事な点を見落とすことになるでしょう。

 説明が短すぎてわかりにくい記述がある一方で、冗長なわりに何を問題としているのか伝わってこない記述も、ときおり見られました。例えばp.62で「時間的反復」という概念に替える形で「アンサンブル」を導入し、「仮想的アンサンブル」と「修正版アンサンブル」に分類しているようですが、「仮想的アンサンブル」とは何なのかわからないし、本書ではそれを導入しておきながら否定的扱いをしているように見えるし、そもそも「仮想的アンサンブル」を考える必要があるのかどうかすら、ついにわかりませんでした。

 誰が読んでも得るところのある書物にしようと思うあまり、誰にとっても不満足な記述が散見される作品になってしまったのではないでしょうか。反面、本書ではいろいろな問題提起がなされており、量子力学についてより深く考える機会を与えてくれます。辛口に批評しましたが、斬新かつ個性的で面白い本です。残念なことは、内容が盛り込みすぎでバランスが悪く、ターゲットとする読者層が絞り込めていないという点です。

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