ミリタリーテクノロジーの物理学＜核兵器＞ (イースト新書Q) の感想

ミリタリー趣味者でも、意外と忘れたり勘違いしているかもしれない（核）物理学の、核兵器に限定した解説書です。
高度に専門的なことは、他の教科書での学習に譲るとして、新書の分量でさっと読めるのがポイントですね。核兵器という部分に物怖じせずに、いろんな方に読んでもらいたいなあと思いました。読みやすく書かれていると思います。

本書は核兵器について書かれた本ですが、かなりしっかりと原子力エネルギー全般について解説されています。
しかも理系の研究者が科学的で中立な視点で分かりやすく書いています。
原発関係の本の多くは、科学者ではない文科系の人が原発推進派か反対派かの視点で、意見を書いてるだけです。
そうした本を手に取る人も推進派か反対派か、自分の立場に近い本を読み、満足するだけです。
そんなのまったく意味がありませんよね。だって原発問題のような複雑な問題って、絶対的な正解なんてありませんから、結局は感情論なんです。原発の必要性をより強く感じるか、嫌悪感が上回るか、最後は感情の問題なんです。なのに自分と同じ立場の本を読んで、感情を高ぶらせて、推進だ反対だっていうのって実に滑稽です。
こうした感情がからむ問題を見つめるときこそ、客観的な事実を知ることが必要なのではないでしょうか。原発ってどんなしくみで、福島ではなにがおこったのか。こうしたことを知った上で原発に対していだく感情は、ただ直感でいだいた感情よりはるかに意味があると思うし、建設的議論に不可欠だと思います。
本書はその一助になると思います。ぜひ多くの人に読んでほしいです。