いま生きる階級論 の感想

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参照データ

タイトルいま生きる階級論
発売日販売日未定
製作者佐藤 優
販売元新潮社
JANコード9784104752096
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済思想・経済学説

購入者の感想

分厚く、久しぶりに「身になった読書体験」でした。ノートを取りながらでも、丸2日間。社会人の方でしたら、スキマ時間で二週間ぐらいかかるかもしれません。
しかし、ぜひともゆっくりローギアで回転させて、思考しながら、読み進めて下さい。重厚な感覚を受けました。

以下は読んで気になった所のメモです。

・一回「労働力商品化」がなされて、商品経済をわしづかみにしてしまうと、その「大きなシステム」からはなかなか抜け出せないんだよ、というのが「資本論」のメッセージである。
・「官僚」という階級がある。これが国家を運営している。そして、国家の特徴は「暴力装置の独占」である。
・いくら資本家が強くても、国家に「おい、お前、払わないとぶっ殺すぞ」と脅されたら、怖いから払わざるを得ない。国民も資本家も、「納得ずく」で税金を払っているわけではない。
・国家は税金を否応無くぶんどるだけで、それに従うしかない。払わないと「脱税」犯として、捕まる。
・なぜ私達は官僚が嫌いか?それは「国家」が暮らす社会の「外側」にあるから、である。「税金を搾取」ではなく「収奪」するからである。
・私達の税金はとてつもなく高すぎる。キリストが生きていた時代の税金は、一ヶ月に1ディナリオン。銀貨一枚。
・農業労働者が、朝の日の出から日没まで働いて、銀貨一枚。当時は安息日の土曜日以外6日間働いたから、だいたい25日間働く、つまり月給25ディナリオン。税率はわずか4%。今の消費税の半分であった。
・税金とは何か。古代のケースを見て見ると、いろいろとよくわかる。しかし「なぜ税金を払わなければいけないのか」は、わからないような仕組みになっている。
・官僚一人当たり、年収700万円だとする。そうしたら1500万円収奪する。それで、「500万円が国防とか安全保障や教育に必要、300万円が生活保護や所得格差の解消に必要」といって、ぶんどる。
・そして「官僚はこうした分配をするための手数料、国家運営のための手数料をとっているだけ」というロジック=「建前」をつくりだす。

サトウ主義かマルクス主義か?

佐藤さんの階級論は、サトウイズムでありマルクスのものではありません。佐藤さんは、あくまで官僚を階級としています。ここが両者の決定的な違いです。もちろん、今日本で最もマルクスを理解しているのは佐藤さんです。

佐藤さん:当然社会は、基本的に官僚を嫌います。だから、反官僚というスローガンを掲げると、どの政党でも成功するのです。
資本家も、地主も、労働者も、どんな階級も官僚が嫌いです。この官僚を自立した階級とみるかどうかで、世の中の見方が変わってきます。ところが、社民党も、共産党も、また民主党の左派も、官僚を階級としてみるという視点をなかなか持ちづらいんですよ。なぜ?自分たちの支持層として、特に地方公務員は必要だからでしょう。(中略)役職に就いているか否かで、片方が労働者の味方、片方が資本家階級だとするのは、もう無理筋です。(本書、pp.231-232)

ところがマルクスは、国家と社会を分離していないし、官僚/公務員も資本主義的生産関係に組み込まれており、公的であれ、サービスその他商品を日々提供し、貨幣と交換している。国営企業が良い例ですし、ソ連では、皆法的に公務員でした。そして、マルクスは、官僚機構をブルジョア社会の補完物と位置づけていて、あくまで、社会の外とはしていない。サトウイズムは、敵味方二元論を階級論に混ぜて簡単に論じているが、そもそもブルジョアだからただちにブルジョアの味方ではないし、プロレタリアだからただちにプロレタリアの味方ではないのが現実である。そもそもマルクスはブルジョアである。レーニンもトロツキーもブルジョアである。階級論と単純な敵味方二元論は峻別してほしいです。しかも、年収と階級論は別です。年収が階級を規定するのではなく、生産様式が規定するというのが厳格な正統マルクス主義です。例えば、数億円の宝くじを当てた労働者は、年収計算では軽く多くのプチブルのそれを超えます。しかし、彼はそれだけではまだブルジョアではないし、彼の契約している生産関係がそのままならば、彼は年収が幾ら入っても労働者のままです。サトウイズムはベルンシュタイン的修正主義と言わざるを得ないのが率直な所です。

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