神経診察クローズアップ−正しい病巣診断のコツ の感想

これまで我が国では長らく「ベッドサイドの神経の診かた」が神経診察，あるいは神経症候学の入門用テキストであったと思われる．「ベッドサイド」しかなかった，というのがその主たる要因であったが，記載が羅列的で何が重要であるかよくわからず，これに換わる良書を待ち望んできたのは私だけではあるまい．一方，我が国の誇る岩田先生や平山先生の著書は，研修医や学生など初学者が通読するには敷居が高かった．そんな中ようやく登場した本書は，新しい世代のバイブルたりうるボテンシャルがあると思われる．記述の仕方がわかりやすくイラストが豊富で，全体的にユーザーフレンドリーな雰囲気が充満しており，とにかくまず「読んでみようかな」という気にさせる書である（難解な印象のある神経学については，このモチベーションを出させるということが大切）．学生や研修医にぜひともおすすめしたい一冊であるが，進んだ内容の記載もあり，神経内科や脳神経外科を専門的に学んでいるレジデントにも有用と思われる．