〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等 (講談社選書メチエ) の感想

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タイトル〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等 (講談社選書メチエ)
発売日販売日未定
製作者坂野 潤治
販売元講談社
JANコード9784062585897
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

歴史の授業で、近代史が一番意味不明です。226事件のあたりは特に、当事者の顔が見えない事もあって誰と誰が戦っていたのか、何と何がぶつかっていたのか何もピンと来ない。
コレがもうわかりやすい数字でバシッと理解できてしまうのが、本書の最大の収穫でした。

おおざっぱに階級が分類され直した明治時代から、産業発展に伴って様々に「明文化されなかった階級」が誕生した大正〜昭和。地主と自営農がいて、ブルジョワが生まれてサラリーマンが生まれてプロレタリアートが生まれて。その相反する利権をどうやって国政でバランスを取るか、というのを、選挙制度と各政党の盛衰を説き明かして行く。そしてその過程で、政治に関与できなかった階級がどうやって発言権を得ていったのかも明らかになって。
たったこれだけの事なのに、どうしてこんなに近代史がわかりやすくなってしまうのか、狐につままれた感じがします。いや眉唾な内容が並んでいるわけじゃなくて、階級と、それぞれの利害と、選挙制度というテーマで高校の歴史を教えれば、すごく分かりやすいんじゃない? なんでやんないの? …という気分。
産業構造の末端にいた工業労働者たちを軍がすくい上げて、彼らの意見を代表ようとしていた(そこにも226に至る分裂があった訳だけど)というのがわかった瞬間、戦争へ走らざるを得なかった日本の底辺のメンタルも見えた気がしました。

本書で言ってることから、さらにもう一段踏み込みますが。
ナチスのプロパガンダ映画「意思の勝利」を観ると(前半だけでいいけど)、ナチスが何もないゼロから立ち上がって、みんなの貧乏だけどあふれる希望を爽やかに吸い取って実力を付けていったのに気付きます。そこで、階級闘争のエネルギーが日本でもドイツでも戦争に向かっていったんだと、本書とあの映画の共通項でわかった次第。
コレを考えると、半数が選挙行かない日本の現状…政府は歴史を鑑みて、寝た子を起こしたくないんだろうな…。
ポピュリズムが叫ばれるようになり、未だ分類されていない現代の「眠れる階級」が起きた時に何が沸き起こるか…を想像させる、意外と未来志向な考えができる良い本でした。

日本の近代史を、「階級」という視点から見直した本である。戦後の高度成長期の一億総中流化で、「階級」という言葉はほとんど死語化したが、非正規労働者の急増や貧困率の増加、貧富の差の拡大など、最近の日本における社会的不平等の進展は明らかである。再び「階級」が問われる時代になったようだ。このことが日本に留まらない先進国共通の現象であることは、トマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)が実証した通りである。本書は、明治維新以降の日本における政治的不平等(誰が選挙権を持っているのか)と社会的不平等(貧富の差)との関係を明らかにしたものである。

本書によれば、明治維新は武士の革命であった。明治初期において地方議員の資格のある納税者は90万人の地主だけであり、これは500万人の農民の中での政治格差を制度化したものであった。一方、40万人の没落士族は多くは官僚や軍人として職にありついたが、これに対する農民の政治的格差是正運動が自由民権運動であると著者は位置付ける。大正の男子普通選挙法により、大都市の中間層の政治的重要性が格段に増したが、治安維持法の同時成立により、社会格差の是正を本格的に訴える政党は議会でほとんど勢力を伸ばすことができなかった。保守派である政友会が「大きな政府」に取り組んだのに対して、比較的リベラルな民政党(憲政会)は社会格差の是正に取り組むよりも「小さな政府」を目指したことは、戦後の自民党と社会党の関係にも通じる皮肉であると著者は指摘する。

男子普通選挙法で、政治的不平等はかなり改善されたものの、社会的不平等(貧富の差)による社会的不満が日中戦争へと至る日本の軍国主義化の底流にあると著者は主張する。二・二六事件(1936年)の勃発は政党政治を吹き飛ばし、挙国一致政権によるファシズム支配が始まる。ところが、このような総力戦体制の中で、格差の是正ともいえる政策が進められたのは歴史の皮肉である。著者は、リベラルな歴史家を悩ませるこのような現象は、格差是正を明治期以来の長い過程で進められてきたことによるものであり、戦時体制がその要因ではないという説を提示している。

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