森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫) の感想

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参照データ

タイトル森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者森 鴎外
販売元筑摩書房
JANコード9784480030917
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 全集・選書 » 個人全集

購入者の感想

 周知のように「ファウスト」はゲーテ以前にも類作品が多々あったとのこと、ゲーテ自身は子供の頃人形劇で観たようである。
 もっとも、当時の小屋掛け芝居にかけられていたファウストの物語は、後年ゲーテの作り出した創造物に比べれば単純で荒唐無稽な空想劇の域を出なかった。
 換骨奪胎とは言わないまでも、悪魔メフィストフェレスと学者ファウストの「魂」の賭けに始まるファンタジー主流の作品で、文献によると、ヨーロッパ各地に存在
した座付き劇団の台本作家の意のままに改編に改編を重ねた類本が現代に残っている。
 ゲーテはこの作品を二十代の頃から温めて六十年の歳月をかけて完成した。有名な諸作品を上梓しながらも、その胸裡には、ファウストの類本を統合し、或い
はそれらを凌ぐような一大叙事詩の創造を夢見ていたにちがいない。
  
 
 さて鴎外訳の「ファウスト」に欠かせないのが、解説を閲した「ファウスト考」なる注釈本である。
 戯曲進行に合わせて事細かな注釈を施し、メフィストのように読者の傍らに寄り添う。類本にはないゲーテの創作部分は随所にあり、しかも当時の世相の風刺
的で諧謔的な部分を多々網羅してあるので、「ファウスト考」を知らずして、漫然と全体を通読するするだけではゲーテの意図が皆目分からない。
 時に退屈で冗長な脂肪太りした豊満な作品として、飽食ぎみに読了してしまう。
 
 翻訳出版当時、鴎外は現代語にしようとするのではなく、自然と現代語になると言っている。まだこう言う作品が現代語になると卑俗だと言われた明治大正時
代のことである。鴎外曰く、「もし作者が此場合此意味を日本語で言ふとしたら、どう言ふだらうか」と思つて見て、その時心に浮かび口に上つた儘を書くに過ぎ
ない」と。

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