吉満義彦――詩と天使の形而上学 の感想

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参照データ

タイトル吉満義彦――詩と天使の形而上学
発売日販売日未定
製作者若松 英輔
販売元岩波書店
JANコード9784000254670
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩論

購入者の感想

若松英輔個人に憾みはないのだが、ぜんぜん誉める気にはならない。
若松の「鍵言葉」である「霊性」というのは、そんなに特別なことを言っているわけではなく、これまでいろんな人が「心」「精神」「魂」「超越性」とか言ってきたことを、今日ウケする言葉に復古して見せただけだ。
だから、もちろん間違ったことは何も言っていないし、むしろ「ごもっともな」御説いがいには、何も新奇なものはない。難解な部分もまったくなく、むしろ気持ちよく「そうだ、そうだ、そのとおり。私も前から、そんなことを考えていたんだよ」と多くの人に思わせてしまうような内容なのだが、そこには半ば意識的な「俗情との結託」が成立しており、そのあたりに問題があるので、誉められない。

で、そのあたりについて手短に批判したのが、若松の『霊性の哲学』(角川選書)についての、下のレビューである。
http://www.amazon.co.jp/review/R38980VO3W4QZD/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=4047035556&channel=detail-glance&nodeID=465392&store=books
ぜひ、そちらを先に読んで、若松「信者」の皆さんは、せいぜい腹を立てて欲しい。
できれば、若松本人にも腹を立てて欲しいが、ご本尊は、これくらいのことでは腹を立てないと、私は見ている。

『霊性の哲学』のレビューで言いたかったことは、そのタイトル「スピリチュアルな時代の「教祖の文学」」に尽きており、レビュー本文はオマケみたいなものだ。
ちなみに、レビュータイトルにある「教祖の文学」というのは、坂口安吾の小林秀雄論のタイトルだが、長いものではないので、読んだことのない人はぜひ読んでいただきたい。
[・・・]

さて、本書『吉満義彦――詩と天使の形而上学』に即して、若松の問題点を説明すると、一番の問題は、若松が「絵を描きすぎる」ということになるだろう。
若松の読書量に圧倒されて、専門家でもないものは、その記述の信頼性に疑義を挟みにくくはあるものの、例えば、本書の主人公 吉満義彦の師である、カトリック神父

 若松氏の処女作である『井筒俊彦: 叡知の哲学』が、井筒俊彦について書かれた初めての本格的な評伝であり、かつ、井筒についての最高峰の著作として長く読み続けられていくであろうものであるのと同様に、いやそれ以上に、『吉満義彦: 詩と天使の形而上学』は、日本近代思想史上の異才である吉満義彦について書かれた初めての本格的な評伝であるとともに、乗り越え不可能なほどに濃密な吉満論として、時代を超えて読み継がれていくであろう画期的な作品となっています。

 哲学・神学・文学を独自な仕方で統合した吉満についての論述を通じて読者である我々の心に届けられるのは、キリスト教の単なる一宗派としての「カトリック」の教義ではなく、人類にとって真に普遍的(カトリック)な叡知の結晶です。

 文学と哲学と宗教を架橋する若松氏の旺盛な仕事が、深いところで吉満の仕事の継承ともなっていることに、読者の多くは気づかされるはずです。

 吉満のことを既に知っている人に対しても、吉満の名前を初めて眼にした人に対しても、自信を持ってお薦めできる一冊です。

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