風の谷のナウシカ [Blu-ray] の感想

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数多の名作が揃う宮崎駿＆ジブリ作品の中で、最も子供達に遺したい作品がこの｢風の谷のナウシカ｣だと思う。
今から37年前、宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、久石譲の後のジブリ主要メンバーと徳間書店が、テレビシリーズをベースにしない劇場長編アニメ化した野心的作品で、その強烈な社会メッセージ性はジブリで最も深くて重い。特に公害や環境汚染の社会問題化を知り、核開発競争やベトナム戦争の東西冷戦を体感した世代にとって、本作が描く腐海と王蟲、巨神兵を巡るトルネキア帝国とペジテ市等のアンチテーゼは決して他人事ではなかった筈。今も繰返し地上波放映される事で、日本人の｢自然保護意識｣や｢戦争･核･生物化学兵器の忌避主義｣に与えた影響は計り知れない。しかも親子で一緒に観て語りながら伝承出来るのだからその存在価値は凄い。
また多様な観客層向けに登場人物にも幅を持たせているのが実にニクい。腐海を探求する少女ナウシカと変節して彼女を支えるアスベル、歴史と戒めを語る大ババとミト達、未来のカタチに悩むユパとクシャナ、王蟲を悪用して失地回復を狙うペジテ市長一派、組織人に徹するクロトワや兵士達。その誰もが真の悪人等ではなく、信じるモノや優先順の違いから相争う姿は恐ろしく現代的だ。その世界観やシナリオ、背景画･動画、音楽や声優の全てが完璧な革新的作品でもある。
科学と自然と人間社会の逃れられない関係性を、たった二時間で愉しませながら語ると言う離れ業を成し遂げた作品に、｢伝説的偉業｣以外の言葉が見当たらない。今も世界で愛される普遍的メッセージは、世紀を超えて一層輝き続けるのだろう、世界映画遺産として。
日テレで隔年放映されるのでDVDやBlu-ray需要は限定的だが、ノーカットかつCM無しの集中時間はやはり替えがたいもの。是非、祖父母からお孫さん迄、ご一緒に話ながらお楽しみ下さい。