Pudd'nhead Wilson: and Those Extraordinary Twins (The Penguin English Library) の感想

　マーク･トウェインと言えば『トム･ソーヤの冒険』や『ハックルベリー･フィンの冒険』で有名だが、この作品は、白人名士の子供と黒人奴隷の子供との取り換え話を軸に、複雑で難解な小説になっている｡トウェインを単なる冒険物語作家と思っている読者は、この作品を読んできっと驚くだろう｡外見上、白人と区別できない黒人奴隷女のロキシーが、主人の売春婦から格下げされていく過程も面白いし、人間の本質が生まれによって決まるのか環境で決まるのかという論争も根底にある｡19世紀前半のアメリカ南部の地方の名家の没落を描いていると読むのも楽しい｡何よりもこの作品自体が真っ二つに分裂しているところが面白い｡マーク･トウェインという作者は何か恐ろしいものを伝えようとしているように思えてならない｡トウェインの文学世界の真髄に迫る傑作である｡