忘れられた日本人 (岩波文庫) の感想
参照データ
タイトル | 忘れられた日本人 (岩波文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 宮本 常一 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003316412 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般 |
購入者の感想
名著。とはいえ今の時代、民俗学の勉強をしている人でなければ、著者の名前は知らないのではないでしょうか。民俗学の本を読むのが好きなわたしも、この著者については最近まで知らなかった。購入後も数年は背表紙を眺めているだけでかなり熟成させてしまった。が、ひとたびページを繰ってみると、その面白いこと!
創作ではないか、と疑いをかけられたことがあとがきに書かれているが、なるほどそう疑われるのも無理がないほど面白かったのは、やはり「土佐源氏」の章である。
橋の下でほとんど乞食のようにして暮らす80歳を過ぎた盲目の老人が語る彼の人生が、この章をなしている。アンチヒーローな彼の人生がそれは魅力的なのだ。ばくろう(牛の売り買いをする人)として、社会の底辺に生き、牛と女のことしかなかった人生を語るその語り口。町の名士の奥様(「おかたさま」)との色恋のくだりなどは、大変おすすめだ。おかたさまが亡くなったとき、3日3晩泣き暮らした彼は、それが原因で目がつぶれた、というのだ。「日本昔話」のおとな版、と言ってしまっては、通俗的過ぎるかしら。電車のなかで読んでいて、涙がこぼれて困ったくらいです。
テープレコーダーもなかなか手に入らなかった時代に、夜を徹して老人たちの話に耳を傾け、その語り口まで一心に書き留めた著者の情熱が素晴らしい。0
創作ではないか、と疑いをかけられたことがあとがきに書かれているが、なるほどそう疑われるのも無理がないほど面白かったのは、やはり「土佐源氏」の章である。
橋の下でほとんど乞食のようにして暮らす80歳を過ぎた盲目の老人が語る彼の人生が、この章をなしている。アンチヒーローな彼の人生がそれは魅力的なのだ。ばくろう(牛の売り買いをする人)として、社会の底辺に生き、牛と女のことしかなかった人生を語るその語り口。町の名士の奥様(「おかたさま」)との色恋のくだりなどは、大変おすすめだ。おかたさまが亡くなったとき、3日3晩泣き暮らした彼は、それが原因で目がつぶれた、というのだ。「日本昔話」のおとな版、と言ってしまっては、通俗的過ぎるかしら。電車のなかで読んでいて、涙がこぼれて困ったくらいです。
テープレコーダーもなかなか手に入らなかった時代に、夜を徹して老人たちの話に耳を傾け、その語り口まで一心に書き留めた著者の情熱が素晴らしい。0