経済は世界史から学べ! の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル経済は世界史から学べ!
発売日販売日未定
製作者茂木 誠
販売元ダイヤモンド社
JANコード9784478023648
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

入口が沢山開かれている本だが、
入口まで来ると次のトピックに移ってしまうという点で教科書的だ。
トピックスは短く、重要な箇所は太字で書かれ、
イラストも豊富でとても読み易い。
巻末には、索引と、コメント付きの読書案内が若干置かれており、親切な作りだ。
入口までは示しておいて、
其処から先は興味に従って各々掘り進めよということだろうか。

興味深い点が幾つか有った。

例えば、或る国で貿易黒字が続くと、その国の通貨が値上がりするので
通貨高になって輸出にブレーキが掛かり、
競合国の製品が相対的に安くなって売れ始める。
その結果、其の「或る国」の貿易収支が悪化していき通貨が下落、
やがて国際競争力を回復する、

自然に任せておけばシーソーバランス的な調整力が働いて上手くいく、
という記述だ。

しかし、3月2日付けの朝日新聞書評欄で、
「グローバリゼーション・パラドクス」ダニ・ロドリック著という本が
紹介されていたが、彼は、グローバリズム礼賛者の
「市場には自発的な参加者が居れば、他に必要とされるものは殆ど無い」
という楽天的考えを信じ難いとして否定している。

つまり、国や経済の強弱が前提として有るのに、
弱者に搾取の痛みを押し付けない儲け方、
世界規模の危機を治癒するような自動調整は上手くいくのだろうか?
という疑義である。

この辺りは、興味有る方なら入口から更に入ってみるべきだろう。

次は、小泉内閣時に30兆円以上を使って
ヘッジファンドから円を守り抜いたという日銀砲。
巡り巡って世界金融危機と自民党大敗を招き、
その後の民主党政権や東日本大震災、
毎年嵩む財政赤字へと繋がって来たのなら、重要な転換期だったと言える。

次に、アベノミクスがアクセルとブレーキを同時に踏んでいる、という記述。

景気浮揚策は次の三点。
1.紙幣の流通量増

歴史に詳しくない人には、とっかかりとして良いかも知れない。通貨の成り立ちや貿易の話の途中までは面白い。保護主義が戦争を招いた、という指摘も正しい。

しかし、間違いや誤解を招く記述、雑な説明も目立つ。イギリスがIMFの支援を受けたのは80年代ではなく70年代だし、日米構造協議はクリントン政権でなくその前の父ブッシュの時。

さらに、構造改革やTPPなど現代日本の課題となると、著者の思考は陰謀論に毒されて、あれもこれもアメリカの陰謀となってしまう。しかしそこには、閉鎖的な業界に競争を促し消費者の利益に資するという視点が抜け落ちている。確かにアメリカは自国の利益に基づいて主張し、腰抜け政治家の妥協で日本が損したこともあるが、損ばかりなら受け入れるはずが無い。安全保障だけで説明するのも無理だ。

アメリカの金融資本が郵貯・簡保の巨額資金に目をつけたというが、郵政民営化でその金はアメリカに取られたのか? そんな話は聞いたことがない。TPPで日本の国民皆保険を潰そうとしているかのように書いているが、米政府高官達がそれを協議の対象外として繰り返し否定している。いずれも陰謀論者の妄想に過ぎない。

財政の章はもうメチャクチャ。こんなに簡単なら著者は経済政策の専門書を書けばいい(既にそうしたトンデモ本はいくつも出版されているが)。あとがきに「私たちは経験を通じてのみ、何が正しいか判断することができる」とあるが、経済理論の検証は現実データを用いた実証分析によらなければならない。

正しい指摘もあるのに、最近の課題になると途端に陰謀論が目立ってくるのは、結局著者が経済の理屈をきちんと理解していないためだろう。分かりやすいものが正しいとは限らない。残念。0

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

経済は世界史から学べ!

アマゾンで購入する
ダイヤモンド社から発売された茂木 誠の経済は世界史から学べ!(JAN:9784478023648)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.