史上最強の哲学入門　東洋の哲人たち (SUN MAGAZINE MOOK) の感想

本書は「初期ウパニシャッドに見られる古代インド思想→原始仏教および大乗仏教→老荘思想→禅」という道筋で主に東洋哲学における「私の本質」を概観する。
巷の入門書とは一線を画した体裁や文体につい目が行きがちだが、真に着目すべきは本書の解説がしっかりと体系化されている点にある。

まず本書は広漠な東洋思想の議論を「私とは認識するものである」という大前提から出発させる。
ここから時系列順に「私の本質にまつわる思想」を取り上げ解説していくのだが、論点を明確にしているため説明に整合性がとれている。
それだけに非常に解り易い構成となっているので、この分野に興味はあるものの知識は無い人にとって、最適な本かもしれない。

尚、買って読むなら以下の三点を留意した方がいいかもしれない。
・先述の通り、本書は“東洋哲学における「私の本質」を概観する”ものだという事。つまり、東洋哲学の一側面を取り扱っているという事。
・なので、初期ウパニシャッドにしろ仏教にしろ道教にしろ、取り上げられているのは主に「私の本質にまつわる思想」のみであるという事。それ以外も含めた『全体部』を概観することは全く叶わない。
・本書の解説体系からして、諸子百家の紹介が浮いてみえること。そしてこちらもまた“紹介”程度の言及に留められているという事。

本書は題名に明記されている通り“入門”の書なので、これ単体で各領野を深く知ることは不可能である。「解説有りの東洋思想家カタログ」として見た方が無難だろう。そうして見た時、本書は上等な入門書と言えるものとなる。