対話集 原田正純の遺言 の感想

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タイトル対話集 原田正純の遺言
発売日販売日未定
販売元岩波書店
JANコード9784000244725
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 地球科学・エコロジー » 産業廃棄物・公害

購入者の感想

それまで散在していた患者たちの存在が徐々に明るみに出て、人類の最大級の公害である水俣病が形を表わし始めた1960年頃から、熊本大学医学部の大学院生として水俣病に関わり始め、その後一生を通じて患者たちとともに苦難を共にしてきた原田正純医師の存在は実に大きい。本書は、2012年6月11日に、惜しまれつつ亡くなった原田氏が、最後の1年間に、闘病中の体を振り絞って、水俣病をはじめとする公害や災害の関係者と語り合った記録である。人類の最大級の負の遺産「水俣病」を後世に語り継ぐ本として、深く心に刻み込まれた。

対話の相手は、水俣病と共に歩んできた同志ともいうべき石牟礼道子氏や、水俣病の患者やその二世の皆さん、水俣病訴訟でチッソや国を訴えるために新しい過失論を苦労しながら構築した富樫貞夫氏、早くから水俣病に注目し、全国にその悲惨さを訴えるために力を尽くしたジャーナリストたち、時代的にほぼ並行して勃発した三池炭鉱爆発の二酸化炭素中毒患者の妻、カネミ油症の患者、新潟水俣病の治療に当たった医師など、実に多彩である。戦後日本の主な公害・食中毒・産業事故が出揃った感がある。共通するのは、規模拡大と効率化一辺倒で突っ走ってきた企業の労働者・周辺住民無視が途方もない事故につながったこと、国や自治体は事故隠しに懸命であり、少なくない医学者が事故を小さく見せることに協力してきたことである。この構造は、東京電力福島第一原発事故とその被害に対する原子力ムラにもそのまま通じている。

宮本憲一氏との対話の中で、原田氏がもらした、「公害が起こると差別が起こるんじゃなくて、もともと差別のあるところに公害問題は押しつけられるんだな、と」という言葉が、公害問題の本質を穿つものとしてズシリと響いた。この他、各対話には、水俣病その他の公害・食中毒・産業事故を、患者・住民の視点から捉え直す観方がちりばめられており、まさに「後世への遺言」にふさわしい。

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