嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) の感想

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タイトル嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者米原 万里
販売元角川学芸出版
JANコード9784043756018
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

この多感な少女は9歳から14歳までをプラハのソビエト学校で過ごした。チェコの学校でもなくいわんや日本人学校でもなくソ連派遣の教師によるソビエト式小・中学校で、ここには50か国もの諸国の共産党幹部の子弟・子女が在籍していた。
彼女が最も仲良しだったのがギリシャ人・リッツア、ルーマニア出身のアーニャ、それにユーゴから来たヤスミンカ。
それぞれに複雑な国家事情・民族的アイデンティティを背負っていた。

万理さんは中学二年を終えたあたりで帰国。日本の教育に少なからず戸惑い・違和感を覚えながらも東京外語・東大大学院修士課程を修了、ロシア語同時通訳者としての道を切り開いていく。この間東欧世界は深刻な政治的変動に遭遇している。曰くソ連戦車に押しつぶされた「プラハの春」、ソビエト連邦の崩壊、ルーマニアでのチャウセスク政権の転覆、泥沼化したユーゴ。仲良しだった彼女たちはこの乱世を無事生き延びたのだろうか、今どんな人生を歩んでいるのだろう。
一別以来三十年、音信の途絶えた三人を捜し当てるために万理は旅発つ・・・

こんな困難な旅はフツーの人にはできない。NHKテレビへの作品化という後押しがあったからこそ実現したのだと思うけれど、それにしても万理さんの行動力・かっての親友たちへの思いの強さがあってこそである。従って本作は小説であると同時にセミ・ドキュメンタリーでもある。少女時代の彼女たちの会話はすこぶる大人びていて、とても小・中学生のものとは思えない。ただ著者の文才におどろく。

ここ3-40年、わが国では「異文化コミュニケーション」だの「国際交流」だのという掛け声だけがもてはやされてきた。本物の国際交流とはどんなものか、この本を読んでじっくり考えてみなければならない。それは浅はかな英会話を少しかじって済む問題ではない。米原さんの場合、ロシア人も舌を巻くほど自然なロシア語ができた。両親の薫陶もあるのだろう、子供ながらもソ連・中国・日本共産党の立場を理解し、ギリシャ・ルーマニア・ユーゴと本家ソ連共産党との距離感を感じ取りながら友人たちの民族的アイデンティティにも同情を寄せることが出来た。高度の言語能力、知性、人間理解・・こういうものが備わらないと国際交流などはおぼつかない。

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