ルパンの消息 (光文社文庫) の感想

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参照データ

タイトルルパンの消息 (光文社文庫)
発売日販売日未定
製作者横山 秀夫
販売元光文社
JANコード9784334745691
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

~1990年12月の東京、15年前の女教師「自殺」事件は、実は「殺人」だった――。謎のタレ込みによって公訴時効まで24時間を切った事件が息を吹き返す。一刻を争う刑事たちのマン・ハンティング、取調室の心理戦、覆される15年前の鑑識結果。そして事件の核心を巡って、失われた少年たちの青春が蘇ってくる。
小説は1990年パートと1975年パート(参考人の元少年の自白~~)に分かれて、交互に進みます。1990年パートでは、今夜の夜半に訪れる時効まで、緊迫する時間との戦いが描かれます。1975年パートでは対照的に、不良高校生3人組が期末テストを盗み出そうとする「ルパン作戦」など、懐かしさとせつなさが入り交じる青春劇が展開されます。この緊張と緩和の繰り返しが、とても気持ち良い。1975年の、まだ戦後の面影の残った巣鴨~~の町並みや喫茶店、都立(とおぼしき)高校の情景は最高です。
過ぎ去った青春を無理矢理思い出すのは、せつないです。本書は、いま人気絶頂の著者が15年前サントリーミステリー大賞に入賞したものの、ずーっと未刊行だった幻の作品を改稿したものだそうです。このせつなさは、この作品独特の来歴のせいかもしれない。土曜の午後、どきどきしながら一気に読~~みました。結末ではほろりとさせられました。いい時間を過ごさせていただきました。~

この本の巻末の横山秀雄自身による「改稿後記」によると、この「ルパンの消息」は、まだ彼が新聞記者をしていた当時の未刊行の作品を改稿して、ようやく出版に漕ぎ着けたのだそうだ。いくら1991年の「サントリーミステリー大賞」の佳作に選ばれているとはいえ、そんないきさつから、私は、この作品を、それほど期待して読み出したわけではないのだが、読み進めるにつれ、この作品は侮れないと思い始め、読み終わったときには、この作品を、「半落ち」、「出口のない海」と並ぶ彼の長編作のベスト・スリーに入る傑作とまで、思うに至ったのである。 

さて、この作品は、「15年前の女教師の自殺案件につき、他殺の疑いが濃厚。女教師が死亡したとされる時間帯に、「ルパン作戦」と称して深夜の学校に忍び込んでいた教え子の3人が殺したらしい」という有力情報に基づき、時効まで24時間しかない捜査が開始されるという物語だ。事件の真相の解明は、「ルパン作戦」の首謀者、喜多芳夫の回想場面を中心に据えて、東京、府中で実際に起こった三億円強奪事件をも絶妙に絡ませて進められていく。そんなこの作品は、横山秀雄には珍しい堂々たる本格派ミステリであり、あっと驚く大どんでん返しも付いている。そのうえに、いかにも横山秀雄らしい、涙なしでは読めないほどの感動の人間ドラマが二段重ねで盛られているのだから、そのレベルの高さは、半端ではない。

「改稿後記」に、「書いた当時の熱っぽさと粗っぽさに驚く」という記述があるのだが、この改稿作には、熱っぽさは存分に感じるものの、粗っぽさは微塵も感じられない。横山秀雄は、この文庫本化にあたり、単行本から、さらなる加筆と修正を行ったそうなのだが、圧倒的な筆力を持つ現在の熟達した手で再改稿をしたのなら、おそらく、未刊行本とは比較にならないくらいの完成度の違いがあるのだろう。機会があれば、ぜひ、未刊行本と比較をしてみたいものだ。 

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