立ちあがる民衆―室町時代後期 (小学館版 学習まんが―少年少女日本の歴史) の感想
参照データ
タイトル | 立ちあがる民衆―室町時代後期 (小学館版 学習まんが―少年少女日本の歴史) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | あおむら 純 |
販売元 | 小学館 |
JANコード | 9784092981096 |
カテゴリ | 歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般 |
購入者の感想
本巻表題「立ちあがる民衆」といふ文字だけ見ると近代の歴史を語ってゐるのかと思へないでもありません。併し、日本の古代よりの歴史から考へてみると室町後期といふ時代は庶民が勃興した時代と言っても過言ではないでせう。統治者の政治史だけでは収まらない歴史の金字塔が本巻には描かれてゐます。本巻第二章で描かれてゐます「土一揆と民衆」は社会混乱の中で庶民が団結して幕府に寺社に対抗して行く様子が興味深く描かれてゐます。こんなにも秩序だった一揆は今まで日本にはなかったのでありませう。それだけ社会の混乱が深刻で大きな枠組の政治が壊れた時代だったと言へさうです。将軍といふ地位が徳川幕府に比べるまでもなく脆弱でその権威を守るだけで汲々としてゐました。政治の実を示すものがなかったのでせう。そこで花開いたのが生活の質を高める庭園や住まひの文化や立花、茶道、水墨画といふ生活文化の向上です。下剋上といふ混乱の時代の中でも日々刻々と生まれ変はってゐたのが文化だったのでありませう。また、応仁の乱といふ京都での戦乱は、都から地方へと人々の退避を生じ、それに伴って京都で蓄積した貴族の文化が伝播、拡散して行ったのです。このやうに社会混乱で漂流する室町後期の時代相を様々考へさせてくれた第九巻でありました。