ITプロフェッショナルは社会価値イノベーションを巻き起こせ の感想

日本のIT産業について、現状の問題点と未来へ向けてのアクションが読みやすい文章で示されてます。

トヨタ式業務改善に代表される部分最適の問題解決手法は、従来より日本の産業が得意としていた方法だが、
現在はあらゆる物のコモディティ化が進み、特にハード製品では付加価値を出す事が難しくなっているという点については、本書に限らず多方面の書籍で書かれています。
その後に続く言葉は、本書でも同じ、やはりイノベーションです。

日本におけるイノベーションという言葉の使い方はまちまちであり、企業HPなどを見るとどこでもその言葉を使っているが、
本書では、技術の延長上にある部分最適化ではなく、社会の潜在的なニーズ(本書ではこれをウォンツとしています)をイノベーターが見出し、
そこにIT技術を加えて生活スタイルまでを変えてしまうようなインパクトあるソリューションの事を、社会価値イノベーションとしてます。
これに当てはまるものとして、アップル社のipodや任天堂のWiiが紹介されており、この辺りは能書きと具体例が程よくブレンドされているので非常に読み易い。
単なる机上の空論で終始していない点は、さすがのIT先進企業であると言える。
こういったリアルな情報は、恐らく同社社員でも意外と知らない情報だったりするのではないかと思います。

個人的に良い気づきと思えた部分として、
社会価値イノベーションは、ビジネスのスタート地点を、「顕在化した問題」からではなく、「潜在的な問題から」へのシフトするという事である、という部分については、
まさにイノベーションを一言で語る上でとてもわかり易く腑に落ちました。
イノベーションを牽引する人材像について、具体的なスキルの明示と、アプローチの方法が示されている点についても参考になります。
また、技術革新、部分最適による付加価値の提供は限界があり、業務プロセス改革(BPR)を含めて行う事でITの恩恵を受けるという事が必要であるという言葉には、
まさに現場で働く者として、成果を出すための一つの大きな要素であると改めて認識できました。