ラマナ・マハルシとの対話 第1巻 の感想

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私も書物として受け取れる教えでは、これ以上は有り得ないと思います。
ラマナの教えは常に実践的・実際的で、探求者が選んだ道が何であれ
決して軽んじることなく、その背後にある実在を直視するよう促します。
分離の感覚があるうちは全身全霊で探求するようにと励まし、
知的な理解・本を読むことの必要性についても無下に否定せず
ある段階までは十分に有効だと言っています。
翻訳者さんの心境の変化でしょうか、ラマナの口調も丁寧語になり
穏やかな対話の雰囲気がよく伝わります。

『あるがままに』は断片的な対話を切り貼りして
一連の会話のように編集されていましたが、本書は時系列順、
質問者の国籍・年齢・職業なども簡単に記されているため
どんな人にどういう文脈で語られたかが分かります。
既刊のラマナ本を熟読された方でも
千冊の書物以上の価値はあると思います。
余談ですが、この巻にはパラマハンサ・ヨガナンダ師が
ラマナを訪れた場面も記録されています。

最近はもっと平易な言葉で目覚めについて書かれた良書が次々と出版され、
「何もしなくていい」「悟りを求めるのもエゴだ」のような非努力型、
あるいは「悟りを求めている『私』など最初から存在しないのです」といった
パラドックス的な表現に人気があるようですが、
よく読めばラマナの教えはこれら全てを包括しており、
言葉で語れる事は語り尽くされています。
聖書やギーターのように時代を越えて多くの人を探求に惹きつけ、
何千年も読み継がれていく本だと思います。