コルシア書店の仲間たち (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルコルシア書店の仲間たち (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者須賀 敦子
販売元文藝春秋
JANコード9784167577018
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

イタリアはミラノにあるコルシカ書店という、
理想の共同体を介して人々の交流を情緒豊かに描いた作品だ。

文章は平易で読み易いのだが、不思議とイタリアの情景が心に浮かんでくるところがすごい。
著者が観てきた世界にどっぷりはまって、気づいたら読了していた。

何でもない話なのだが、爽快な読後感を味わえるし、活き活きとした情景が浮かぶ文とは何たるかを学べる作品であった。

須賀 敦子さん、有難うございました。

以下、気に入ったフレーズ

私のミラノは、たしかに狭かったけれども、そのなかのどの道も、
だれか友人の思い出に、なにかの出来事の記憶に、しっかりと結びついている。
通りの名を聞いただけで、だれかの笑い声を思い出したり、だれかの泣きそうな顔が目に浮かんだりする。
十一年暮らしたミラノで、とうとう一度もガイド・ブックを買わなかったのに気づいたのは、日本に帰って数年たってからだった。

著者が若い頃に移り住んだミラノの町にある小さな書店。夫となる人も含め、より良い社会の実現を目指し、理想に燃える仲間たちの姿を丁寧に描写している。
年月を経て、夫から取り残され、やがては町の住人ではなくなっても度々イタリアを訪れ、かつての仲間や友人たちと短い時間を共にする作者が、様々なエピソードをつないでいく。時として時間軸や場所が交錯し、章の最後まで読むと、霧が突然晴れるように全体像が見渡せるようになる。パズルのかけらを一つ一つ集めて一つの風景を創作していくような、繊細かつ大胆な構成が見事である。口語のような印象を与える柔らかさを持ちながらも、深みのある文学的な気品を失わない言葉を、練りに練って贅肉を落とした簡潔な文章にまとめ、軽快なテンポを保っている。文学作品を翻訳するという作業に長年携わってきた中で鍛え上げられた職人技とセンスが素晴らしい。

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