新装版 日本石造美術辞典 の感想

全国のおよそ石造で美的鑑賞の対象たりうるもの全てについて1000余をとりあげています。これでも比較的重要と思われるものに相当しぼったそうです。掲載品の全てについて25の種類(層塔、宝塔、多宝塔、五輪塔、宝篋印塔、一重塔、笠塔婆、自然石塔婆、角塔婆、板碑、無縫塔、石幢、石仏、石室、石橋、石燈籠、炉、水船、石鳥居、狛犬、石碑、石臼、露盤、台座、石壇)別に年代順に並べた目次(県、紀年、頁)がついています。どれが基準作例や優品であるかは、次の時代別概観でわかります。各品解説はあいうえお順で、所在地、国宝・重文・史跡などの指定、年代、高さ、岩質がまず示され、特徴に進み刻文があれば解読しています。アクセスもできる限り記そうとされています。後ろに800余の用語解説、各種塔・笠塔婆・板碑・石幢・石燈籠の各部解説イラスト、梵字例などがついています。挿入写真500余は全てモノクロで小さい。これらは寺社の名脇役で、古建築、名庭や仏像、寺社宝拝観のついでにあれば見ていくというものが多いと思います。有名寺社で重要な石造品も有する所は奈良なら当麻寺、薬師寺、般若寺、室生寺、長岳寺、談山神社など、京都なら高山寺、泉涌寺、岩船寺、宝積寺など、その他地方にも滋賀石山寺・西明寺、四天王寺、青岸渡寺、温泉寺、尾道浄土寺、大山祇神社、富貴寺など数多い。しかし、他に重文、名勝などさして有しない寺社でも優秀な石造品が複数集まっ（められ）ている所(埼玉県慈光寺、立川普済寺、箱根山、滋賀県石塔寺・徳源院、笠置寺、奈良県額安寺・来迎寺、大阪府地黄丸山、宝塚波豆八幡神社、加古川報恩寺、岡山県保月、香川県白峯寺、愛媛県乗禅寺、国東岩戸寺、熊本県旧城泉寺、隼人塚など)は見応えがあり、名品といっても一つだけ(能登明泉寺、滋賀懸所宝塔・松尾寺・比都佐神社など)では躊躇される方もお出かけになる気がわいてくるのではないでしょうか。また、石仏は材質の違いが味で旅行ガイドなどでとりあげられる臼杵磨崖仏、奈良県石位寺・頭塔・地獄谷石窟仏・十輪院、滋賀県狛坂寺磨崖仏などがやはり素晴らしい。が、それほど有名ではない神光寺(徳島)、石堂薬師(岡山県)、八家地蔵石仏(兵庫県)、大原弥陀石仏・石像寺(京都)、香炉岡弥勒(比叡山)、藤尾磨崖仏(大津)、山王神社(奈良県)、地蔵峰寺(和歌山県)、日石寺(富山県)、陽泉寺(福島)などもなかなか捨てがた