チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2) の感想

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参照データ

タイトルチョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)
発売日販売日未定
製作者ロアルド・ダール
販売元評論社
JANコード9784566014114
カテゴリ文学・評論 » 評論・文学研究 » 外国文学研究 » 英米文学

購入者の感想

人名の違いが、旧訳を読んできたものにとっては、違和感がある。
田村隆一氏による旧訳では、ベルーカ・サルトであったのが、
柳瀬尚紀氏による新訳では、イボダラーケ・ショッパーとなっている。
これらは、良心的に解釈すれば、
ベルーカは疣贅(いぼ)、
サルトはソルトつまり塩であり、
せっかく面白い名前がついているので、
子供にもわかりやすくしてあげるべきだという翻訳家としての親切心からと思われる。
しかし、たとえば、ドリトル先生は"do little"から取られた名前だからといって、
「やぶ」医者先生などと訳したら、やはりおかしいであろう。
「星の王子様」だって、原本どおり、「小さな王子様」と題した訳本の売れ行きは悪いそうだ。
先人の業績を、馬鹿にしてはやはりいけないのである。
翻訳者として、どうしても、ベルーカがいぼであるということを示したいのであれば、
訳注を初出のページに付ければいいのだ。それだけのことじゃないか。
田村氏は理解していたのだろうかなどという不遜な物言いといい、
柳瀬氏のやりすぎであったということは、否めない。
ちなみに、ベルーカとは足の裏の魚の目がどうのこうのというせりふが出てくるので、
田村氏はちゃんとわかっていたに違いあるまい。
だが、しかし、人の名前を除けば、それ以外は、新訳のほうが断然優れている。
今回比較してみてはじめて気づいたのだが、
田村訳は一部原文が抜けているところがあり、これは重大な欠陥である。
名前にこだわらず、田村氏を批判さえしなかったら、☆5つだったのに・・・
なお、評論社は旧訳版を全面的に廃版にしたようだが、これはいただけない。。
早急に旧訳も再発売してほしい。

「原作の雰囲気ぶち壊し」
「原作の雰囲気をよく表している」
と意見が真っ二つで、原作も旧訳も読んだことがない人はどちらだろうと首をかしげるだろうから、
参考までに、英米(つまりダールの原文を読んだ人々)の評価について書いてみる。

ダールの伝記によると、彼の子供向けの作品が
「こんなもの(『チャーリー』含む)暴力的で残虐でとても子供に読ませられるものじゃない」
と批判を受けたとき、ダールは
「私の作品が子供向けではないというなんてどういう神経しているんだ。私は毎晩自分の物語を子供たちに読んで聞かせているし、子供たちも楽しんでいる」
と怒りのコメントを出している。(言葉は正確ではないが、概ねこのような内容)
どうも作者の存命中から彼の児童作品には賛否両論あったらしい。

興味深いのは、Amazonのイギリス・アメリカにおけるブックレビューで、イギリスでは最低評価が★3であるのに対し、アメリカでは少ないながら★1がついている。
イギリスの方がブラックジョークに耐性があるのだろうか?
ダールの大ファンでなければぜひamazon.comの原文を見てもらいたいのだが、
「残酷すぎて読むのをやめた」
「子供のとき読んだら怖くて悪夢にうなされた」
「(子どもの本といっても)子供のための本ではなく、子供について書いただけの本」
「読んではいけない」
「ダールはサディスト野郎」
という意見が見られる。
もちろん、★1には「つまらなくて読むに耐えない」といった意見もある。
「子供のとき学校で読むことを強制され、仕方なく読んだけどつまらなくて嫌いになった」という意見もあるので、児童書と認識されてはいるようだ。

この翻訳に対しても「こんな訳じゃとても子供には読ませられない」という批判が続出しているのはご覧のとおりだが、「ブラック・残虐すぎて読ませられない」という意見を多少なりとももたれるのが、案外それが原文に沿った受容のされ方なのかもしれない。

きわめて読後感の悪い翻訳者のあとがきです。翻訳論など、翻訳専門誌でやればよろしい。先人の努力に対して尊敬のカケラもなく、それどころか揶揄するようなあとがきは児童書にふさわしくありません。見識を疑います。0

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