非線形科学 (集英社新書 408G) の感想

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参照データ

タイトル非線形科学 (集英社新書 408G)
発売日販売日未定
製作者蔵本 由紀
販売元集英社
JANコード9784087204087
カテゴリ » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 科学読み物

購入者の感想

本書は興味深いトピックに満ちている。しかし多くの読者がフラストレーションを感ずるのではないだろうか。熱力学や統計力学の基礎知識がある読者の場合、説明が端折りすぎたり例え話だったりで隔靴掻痒なのだ。用語の定義を明確にし数式を使いきっちり説明してほしいと感ずるだろう。グラフの多くには軸がどんな量を表すかの説明がない。

一方でそのような知識のない読者の場合、次々と登場する専門用語やトピックが多すぎて咀嚼能力を越えてしまう。著者にすればどれが重要でどれがそれほど重要でないかの区別は付いているだろうが、読者はそれが分からない。等しく重要だと思い記憶に留めようとする。正確に伝えようとする気持ちは分かるが、トピックを絞り、また各トピックの説明も重点に絞り、読者が付いて来やすい最小の分量にすべきではなかったろうか。

著者が、数式を極力使わずに、平易に解説してくれようとしていて、それは十分感じられるのだが、まだ初学者には難しく、一読ではほとんど理解できなかった。
概念的な専門用語がいくつも出てきて、それが頭に入らないと、展開についていけないようだ。ノートでも取りながら読めば、非常にわかりやすいのかもしれないが…。
非線形科学の様々なパターンや学説が述べられるのだが、それが具体的に日常ではどのような形で表れているのかを、もっと図版を使って示してもらえるといいかもしれない。

デカルトは、世界は時計仕掛けのようであり、各部品を一つ一つ個別に研究した上で最後に全体を大きな構図で見ればその機械が理解できるように、世界も分かるだろう、と述べました。この「分解の後に統合する」という考え方は、分解に重点が置かれることになって「要素還元主義」が形成されました。しかし、水分子1個の性質から水や氷(結晶系、成長形("雪"))の性質を予測するのが難しいことから分かるように、様々なモノは階層構造を持ち、(還元主義によって得られる)下層要素の情報だけでは上層や全体の振る舞いが予想できないことが認識されました。このような現象が「創発(emergence)」と呼ばれる訳です。(つまり"More is different(量が増えると質が変わる)"(P.W.Anderson)なのです)
本書のテーマ「非線形科学」は、そのような「創発」を理解するための"思考の道具箱"であり、この40年の間に様々な"道具"が揃ってきました。本書を読むと、非線形科学の泰斗である蔵本先生がこれらの"道具"をどのように日常の言葉で理解しているのか、「蔵本先生の頭の中」を覗いたような気分になれます。「現実の根底にある自然法則に気付くのは達人で、現実の根底にある自然の調和に気付くのは詩人である」(湯川秀樹)、この意味で蔵本先生は達人であり詩人ですね。
章立ては次の通り:第1章 崩壊と創造、第2章 力学的自然像、第3章 パターン形成、第4章 リズムと同期、第5章 カオスの世界、第6章 ゆらぐ自然
通読すると、「カオス」(グリック)/「複雑系」(ワールドロップ)/「SYNC」(ストロガッツ)や複雑ネットワークの本(「新ネットワーク思考」(バラバシ))の内容をざっと概観した気分になれます。数式は殆どありませんが、この分野に馴染みのない読者には少し歯応えあるかも。
なお、蔵本教授の最終講義録「非線形科学の形成−その一断面」はWEB上で公開されていますので、こちらも併せて見ると面白いでしょう。0

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