ロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトルロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者石黒 浩
販売元講談社
JANコード9784062880237
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想

購入者の感想

2009年の出版で著者初期の著作である。今に至る問題は提出されていてロボット工学により進捗中である。
その主張は、人に心はなく、人は互いに心を持っていると信じているだけである。
人間がロボットを作る根源的理由は、人間を知りたいという欲求に根ざすものである。

心は、相互作用によって生まれる主観的現象である。なぜ、相互作用を起こすかの答えは「情動」にあり性的情動に起因する。
そして、情動には、もう一つ知的情動(好奇心)もある。
ロボットに情動を組み込む必要があるが、性の問題は難解で不思議な問題に突き当たる覚悟が要る。

最近、その入り口部分に取り組めるようになったがそれはジェミノイドをミニマルデザインしたむき身の人間のようなテレノイド(年齢・性別不詳の容貌)である。

コンピュータが認識機能を持つには、人間と同様環境の中で動き回り物に触れる体が必要となる。
究極的には、「人間とは、何か?」ということである。それには、「人間と関わる機能」が必要である。
第一歩は、インターネットや携帯電話のように人間が分からなくても、利用するものを作ることは可能である。そして、それ自体が人間理解を伴うものとなっている。
人間の脳は、他の人間を認識し人間と関わるために設計されている。そして、見かけは、動き同様に重要であることが分かった。

人間は、必要なときにだけ特定の感覚に注意を向けそこから情報を得る。それ以外は、恐らくそうであろうという「予測」の下に行動している。一旦、人間らしいと思えば他の感覚器も人間として反応するだろうという予測の下に体全体の感覚器が制御されている。
アンドロイドであっても一旦、人間らしいと思えば匂いさえ再現する。勿論、逆もある。一旦、人間と違うと判断すれば他の感覚も同様に人間ないと反応する。
人間は、「見かけ」に非常に敏感である。また、無意識的微小動作も非常に敏感である。

これまでに分かったこと。
.人は、他人ほど自分のことを知らない。
.社会がなければ、人間は自分を知ることができない。

人間とは何か?この哲学的な命題を説くためにこそロボットを開発してきた著者による、人間存在論としてのロボット論である。人間がさらなる便利を手に入れるために、より人間に近い人型ロボットを創造していく。ロボットが身近で何をしていても「不気味」にならぬよう、「彼(彼女)ら」のしぐさや動作や会話やコミュニケーションの仕方を、より「リアル」になるよう技術的に工夫していく。その技術進化の過程で、人間とはどのような存在なのかが、特にその「心」とは何なのかが、逆説的に理解できるようになってくる。本書は、著者がそのようにして獲得した人間理解のポイントをわかりやすく論じた、新書の傑作である。
各章ことごとく興味深い知見に満ちているが、私的に特におもしろかったのが、著者が自分のアンドロイドを造りそれを実験に用いた経験が語られるところ。対面してすぐにはあまり感じるところはなかったが、それが他の人物によって触られたり荒々しく扱われたりするのを見ていると、興奮したり痛みを感じたりしたという。「人は自分に対する行為を観察することで、自分を認識する」ことをまさに痛感したのだと。また、アンドロイドの動きは自分らしくないなと思っていたが、教え子らによれば「先生そっくり」ということで、「人は他人ほど自分のことを知らない」という真実を改めて確認する。本書には、こうした心理学や社会学でも言われてきた見識が、人型ロボットというきわめて生々しい存在により実証されているくだりが多々あり、誠に興味深い。
あるいは、平田オリザ氏とコラボして創作した「ロボット演劇」の話も、すごくいい。人間とロボットが「共演」する舞台劇なのだが、オリザ氏は演技指導の際、人間もロボットを区別せず、また彼らの「心」などは全く重視せず、ただ、いつどこに立ちどう動きどうしゃべるか、といったことだけを教えこんだ。するとそれを観た観客は不思議なことに、「ロボットに心を感じた」と述べたいう。この経験から著者は、「ロボットでも人間のような心を再現できる」という確信を得る。優れた演出家の演技指導をロボットにプログラミングすれば、ロボットは「心」を持つのだ。実際的に、そう考える他ないのだ。

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