Modern Methods of Organic Synthesis の感想

本書は、炭素結合形成反応、酸化、還元、ラジカル反応など、有機合成を大きく７章に分類して解説していますが、最大の特徴は、その解説の仕方、論理の運びがすばらしい点です。各章のはじめは、有機化学の基本的なところから説明してくれているのでとっつきやすく、徐々に内容がレベルアップしていき、一つの章を読み終える頃には、有機合成で重要なトピックスはあらかた頭に入ります。ポイントを押さえた解説は、ストレスなく読み進める事ができます。包括的議論を控えている事で、逆に内容が緩慢になる事を防いでいます。反応メカニズムを極力避けてシンプルな解説に徹しているので、この点をフォローしたい人には、「the art of writing reasonable organic reaction mechanisms」がお勧めです。文献も適度に引用されており、単なる教科書としてだけでなく、実践的にも利用可能です。これくらい完成度の高い有機合成の教科書は他に少ない事を考えると、学生、研究者、どちらにもお薦めできます。