遮光 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル遮光 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者中村 文則
販売元新潮社
JANコード9784101289533
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » な行の著者

購入者の感想

作者のデビュー作「銃」に続く第二作「遮光」は、非常に似通った兄弟のような小説だ。
『銃』では、死体から銃を持ち帰り、日々銃を持ち歩き、その銃に支配され、常軌を逸してゆく。
『遮光』では、死体から指を切り離して持ち帰り、日々指を持ち歩き、その指に支配され、常軌を逸してゆく。
こう書くと、非常に似通っていることがわかるだろう。

しかし、『銃』は徹底的に孤独であり、なぜ主人公が銃に魅せられてしまうのかが不明瞭だったが、
『遮光』は死んだ恋人の小指であり、それを持ち歩くには恋人を失ったことを認めたくないという明確な理由がある。
そういう意味では、ひとつ、人との繋がりというものをテーマとして導入し、進化したとも言える。

だが、迎える結末は同じ殺人である。
なぜ、同じ着地点へと辿り着いてしまうのか?
『銃』ならわかる。銃自体が人を殺す道具であり、既にそれに魅せられた時点で人を殺してしまいたくなるのが人間というものだ。
しかし『遮光』は恋人の死体から持ち去ってきた小指だ。それが人を殺す理由になり得るだろうか?
主人公の私は、ずっと演じ続けていた。そして典型的な幸福に憧れていた。それを恋人と迎えたかった。
それが、あまりにも唐突な「恋人の死」によって、不条理にも奪われてしまう。
その怒りの感情にずっと「私」は気づかない振りをしていたのだが、あるきっかけによってついに爆発ささせてしまう。
それが殺人へと繋がってしまった。
つまり『遮光』は、不条理と決別し、自分の本物の感情を手に入れたかったのだろう。
指を口にくわえて終わるラストが、恋人との一体感を強く求める「私」の着地点だった。
殺人まで行き着かなければ目覚めなかった生の感情。

果たして「私」は初めから狂っていたのだろうか。それとも恋人の死が彼を狂わせたのだろうか。
私はどちらでもないと思う。主人公は決して狂ってはいなかった。ただただ孤独だったのだ。

『銃』を読んだとき、この作者のテーマは「悪」だと思っていたが、私は間違っていたのかもしれない。

中村文則さんにハマって一番好きな小説です。
何故この方はいつも過去に闇を抱えた人ばかりを主人公にするのか?
他のレビューでは「ありきたり」なんて言葉も見えましたが、
毎作ですよ?ありきたりの発想ではない気がします。
著者は作品それぞれの闇の背景をわたしたちの普遍的なありきたりさと
沿わせているんじゃないかと思うのです。(意味わからなかったらすみません)
毎回主人公に感情移入できる部分を見つけてはゾッとする、
でもその怖さって誰もが持ち合わせている一面だと思うのです。
その感覚は中村文則さんならではだと思っています。

世間は分かりやすい謎解きミステリーを激押していますね、
わかりやすさは無くても、考えさせてくれるような内容味のある作品こそ、
永く残して欲しいと思います。

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