おんがえし の感想

村上ゆきさんのヴォーカルを好きでずっと聴いてきました。この７作目にあたる『おんがえし』は、耳に馴染んでいるＣＭソングを彼女の個性で新たな光を与えたような素敵な歌唱が並んでいました。

半世紀以上の間、CM音楽プロデューサーとして活動してこられている大森昭男氏や、積水ハウス、サントリーなどのＣＭコピーライターとして活躍している一倉宏氏の手がけた作品の音楽をカヴァ―しています。

「夢一夜」、「いっそセレナーデ」、「愛燦燦」、「ワインレッドの心」など、よく知られている曲ばかりですが、ラストの「積水ハウスの歌　50周年ヴァージョン」が一番気に入っています。彼女のヴォーカルは癒しの極致でしょう。
ピアノ弾き語りというシンプルな歌唱ですが、歌詞の一つ一つが明瞭で、小林亜星さんの作った温かい楽曲の良さをストレートに届けるものでした。
「積水ハウスの歌」の歌詞は、50周年ヴァージョンとして一倉宏氏が新たに作詞したものですが、これがまた泣かせる温かさを内蔵しており、テレビでこの曲が流れると思わず耳を止めてしまうほどです。この曲が収録されたことがこのアルバムの価値を多いに高めたことは間違いないでしょう。

♪一日(ひとひ)を　終われば　待つ　ひと　家　季節の　描く道　胸に　灯る　明かり　あの街に　あの家に　こころは　帰る　m m m m　m m m　積水ハウス♪で始まる穏やかな歌唱ですが、感情移入も確かで、切々とした歌声の中に秘められた情感が一杯詰まっているように受け取りました。3分33秒の曲を何十回となく繰り返し聴きました。ハミングまでが温かく響く歌手はそうはいませんので。

4曲目の「ウイスキーが、お好きでしょ」は名アレンジでしたし、素敵なジャズでした。少しアンニュイな表情が伺え、重くはありませんが、けだるさがハスキーヴォイスから伝わってきます。ギターとベースとピアノの伴奏も粋でした。