西遊記~はじまりのはじまり~とんでもねー!Ver [Blu-ray] の感想

モーツァルトは模倣の達人にして独創を生み出した天才です。
独創は模倣なくしては為し得ないのですが、チャウ・シンチー監督の作品を観るに過去の作品へのオマージュともパロディとも思える様々な要素が作品にとり込められています。特にラストシーンは日本の往年のテレビドラマを思い起こし笑みがこぼれました。
チャウ・シンチー作品には純粋な夢を求めても打ち砕かれながら最後には勝利を得るというストーリーが定番です。
彼の作品を観るにティム・バートンの「マーズ・アタック」で完結するまでの私的トラウマと同じものを感じてしまいます。

西遊記はこれまで様々に作品化されてきましたし、今でも競合をする作品があるので難解なテーマです。
本作はシンチー版西遊記として「非常に面白い！」と思いました。
西遊記と言えば孫悟空の始まりから描くことが多いですが、本作では三蔵法師の始まりから西遊記を描いています。
*勿論、シンチー流のエンターテインメントですが…。

続編、そして続々編も観てみたいと願っています。
どんな終わり方をするのかがとても興味深いです！

日本では少林サッカーが売れたから愉快、痛快なギャグ作品を作るイメージがあるチャウ・シンチー。
しかし本当はとても奇怪なセンスを持った唯一無二の人だと思う。

ギャグが怒涛のように繰り出される中にも基本的に漂うのはこの世に流れる無常観、
いや、そんな大層なもんではないかもしれないが(笑)、
救いようのない貧乏人や愚直な恋愛感情、身も蓋もない残酷展開などからするに
お気楽、大衆を喜ばせますといったものとはすぅーっと外れていて
この西遊記もかなり予想と違った映画だった。えー、いい意味で(笑)。

「世間に溢れるセオリー通りのいい話」を観たい人には微妙にオススメできないが、
その類まれなセンスに貫かれた数々の描写を見ているだけで楽しめるので、
「時間あれば見て！！」とは言いたくなる。

そして「地獄めぐりをしてからちゃんと希望に向かおうじゃないか」というような
少林サッカーにも思い出せばあったメッセージはちゃんと流れてる。

上辺でなく本当の意味で、とっても誠実で優しい人かもしれない、チャウ・シンチー。

チャウシンチーは西遊記に非常に思い入れがあるようで、三度目の映像化
以前の自身が主役ではなく、制作側にまわってしまってのが、非常に残念
（カメオ出演はしています。ぱっと見わからないですが・・）

第壹佰零壹回月光寶盒（チャイニーズ・オデッセイ Part1 月光の恋）
大結局之仙履奇縁　　　（チャイニーズ・オデッセイ Part2 永遠の恋）
とつづいての西遊：降魔編が今作
中国映画史上歴代2位と大ヒットしたので、続編（西遊：列国編（仮））も制作決定

チャウシンチーの西遊記のおもしろいところは、表面部分のホラー要素でもコメディ要素でもアクション要素でもなく
ねっこにある恋愛要素です

前作は１万年の愛する時間
今作は この瞬間の愛

前作の名曲　”一生所愛 ”も使用されており涙なくしては見れない

前作も再発売してほしい