CIA秘録 下 の感想
参照データ
タイトル | CIA秘録 下 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ティム・ワイナー |
販売元 | 文藝春秋 |
JANコード | 9784163708102 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門 |
購入者の感想
著者は30年に渡りCIAを取材、フォローしているニューヨークタイムズ記者。本書は近年機密指定解除された5万点に及ぶ文書や三百人以上の関係者への実名インタビューに基づいておりオフレコ証言一切なし。ここにCIAの衝撃的な内幕が見事に再現される。
下巻では映画や小説でイメージするような万能の存在としてのCIAは創られた神話に過ぎないことがこれでもかというくらい露わにされている。敵対勢力に浸透し、敵と話し、敵の心を知ることこそ諜報活動の本分であるにもかかわらず、CIAはヴェトナムでもイラクでも相手国政府に浸透することは全くできず、相手国の言語・文化を熟知する要員は極度に不足し、客観的情報分析能力に欠如する状態で偽情報や得体のしれず胡散臭い亡命者のデタラメ情報に振り回されてきた。また、一官僚機構でもあるCIAは政権に相手にされなければ存在理由が示せない。CIAは政権の顔色を伺い、政権の望んでいる情報を政権の望むとおりに提供するだけの存在になっていく。
相手の言語・文化を学び、相手を理解することなくして真の諜報はありえない。著者のメッセージはそこに尽きるが、そのことは諜報に限らずアメリカ外交全般に通じる教訓であろう。本書がはじめに批判ありきで「偏向」しているとの声もあるが、開示資料に基づく本書が示すCIAの失敗の数々は全て事実であり、そこから反省と教訓を学び取ろうとする著者のスタンスは健全なジャーナリズムの存在を確認させてくれるものであろう。「成功」の事例があったとしてもそれを理由に無数の失敗と膨大な犠牲、そして相手国民衆の被害がトレードオフされるわけではないのだから。
下巻では映画や小説でイメージするような万能の存在としてのCIAは創られた神話に過ぎないことがこれでもかというくらい露わにされている。敵対勢力に浸透し、敵と話し、敵の心を知ることこそ諜報活動の本分であるにもかかわらず、CIAはヴェトナムでもイラクでも相手国政府に浸透することは全くできず、相手国の言語・文化を熟知する要員は極度に不足し、客観的情報分析能力に欠如する状態で偽情報や得体のしれず胡散臭い亡命者のデタラメ情報に振り回されてきた。また、一官僚機構でもあるCIAは政権に相手にされなければ存在理由が示せない。CIAは政権の顔色を伺い、政権の望んでいる情報を政権の望むとおりに提供するだけの存在になっていく。
相手の言語・文化を学び、相手を理解することなくして真の諜報はありえない。著者のメッセージはそこに尽きるが、そのことは諜報に限らずアメリカ外交全般に通じる教訓であろう。本書がはじめに批判ありきで「偏向」しているとの声もあるが、開示資料に基づく本書が示すCIAの失敗の数々は全て事実であり、そこから反省と教訓を学び取ろうとする著者のスタンスは健全なジャーナリズムの存在を確認させてくれるものであろう。「成功」の事例があったとしてもそれを理由に無数の失敗と膨大な犠牲、そして相手国民衆の被害がトレードオフされるわけではないのだから。