世界一美しい団地図鑑 (エクスナレッジムック) の感想

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参照データ

タイトル世界一美しい団地図鑑 (エクスナレッジムック)
発売日販売日未定
製作者内田 青蔵
販売元エクスナレッジ
JANコード9784767813950
カテゴリ » ジャンル別 » アート・建築・デザイン » 建築

購入者の感想

 ページを開くまでは、なんとなくヴィジュアル一辺倒の写真集か、それに近いものだと思っていた。これほど精密な、住居にかかわる研究書だとは考えなかった。以前、軍艦島に関心があって、『軍艦島実測調査資料集』という大部の本を図書館から借りて読んだことがあったが、ずっとコンパクトだとはいえ、ああいったものに通じる本である。
 ただし見事に撮られたカラー写真とその配置、すみずみに気を配った全体のレイアウトなど、本書が「建築」という一種のデザインにかかわる本だということを、いやがうえにも感じさせる。
 「傑作団地案内」として1927年の「同潤会代官山アパート」から2003年の「東雲キャナルコートCODAN」まで18の建築あるいは建築集団が丁寧に紹介され、日本における集合住宅の歴史が概観される。その前に基礎知識として「間取り」が説明されるが、祖形的に考案された「51C」タイプの部屋とは、1951年に12坪のCデザイン(ほかは16坪のAと14坪のB)が採用されたための命名である。
 戦後まもない時期の日本における住環境を想像させるが、その年より3年前に生まれた私は小学生時代における家屋の(家族成員に比しての)狭さを思いだすにつけ、不自然とは感じない。
 今年芥川賞を受賞した黒田夏子とその作品を見出した蓮實重彦との対談で、蓮實は作品のなかにうっすらと描かれた戦前の3階建て住居に注目し、階級の没落的な言葉を口にしている。だが私が思うに、『abさんご』に救いがあるとすれば、そうした没落を由々しきこととして描かなかったことにある。江藤淳が死後、なんとなく勢いのある評価がなされないのは、逆の理由によるだろう。
 ところで本書には、バブル期を象徴する「大川端リバーシティ21」も傑作団地の一つとして紹介されているが(当時の途方もない賃貸料も記されている)、この近辺に生をうけた吉本隆明がかつて団地を共同納骨堂と表現したことを私は覚えている。それはバブル期のずっと前のことだったが、その当時彼のほかの言葉が諄々と染みとおるのとは逆に、団地についての言葉に説得される余地がこちらには全くなかった。アパートの三畳間に住んでいた時期である。

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