アウンサンスーチーのビルマ――民主化と国民和解への道 (岩波現代全書) の感想
参照データ
タイトル | アウンサンスーチーのビルマ――民主化と国民和解への道 (岩波現代全書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 根本 敬 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784000291514 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門 |
購入者の感想
これからのビルマを考える上で、長い自宅軟禁からようやくに解放され、下院議員という「合法」的存在として表舞台に登場したアウンサンスーチーが大きなファクターであることは誰も疑いを持たないことであろう。民主化を期待されるビルマにおいて世界中が注目し、国内から多くの支持を集めるアウンサンスーチーの影響力は大きく、その行動の基礎とも言うべき、彼女の思想をそのバックグラウンドともに理解しておくことは非常に有意義である。具体的な状況で生きていく人間にとって、その時々の流れによって、大なり小なり思想は変わる傾向はあるが、アウンサンスーチーは「民主化」と「国民和解」、そして「真理にかなった国民による民主主義の国」の実現に向け、確固とした思想を持ちそれがこれほどの苦難にあっても変わっていない。著者は、彼女の言動、ビルマの近現代史、そして反体制派諸グループへの聞き取りなど自身の体験を交えながら、アウンサンスーチーの思想とその実践を明らかにしている。著者の指摘にある通り、ビルマ国民は厳しい言論統制下にあり、アウンサンスーチーの発言などを我々外国人が知っているほどは知らない部分もある。そのため下院議員としての活動に対し、自分の利害にあわない国民からは、「人が変わった」など批難に晒されている部分もある。こうした批判にすら「批判は民主的」とする彼女自身の口から直接に思想が語られる部分も増えていくと予想されるが、その変わらぬ思想をビルマの国民自身がどのように捉えていくかも着目して行きたいとところ。本書は、アウンサンスーチーという人物そのものに関心がある人だけではなく、現在のビルマ、そして将来のビルマを考えたい人に必携の書ではないだろうか。また、各章の扉に掲載されている著者撮影も含めたアウンサンスーチーの肖像が、80年代に民主化運動に登場し世紀をまたいで再登場した年月の長さを物語っており非常に印象深い。