経済成長がすべてか?――デモクラシーが人文学を必要とする理由 の感想

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タイトル経済成長がすべてか?――デモクラシーが人文学を必要とする理由
発売日販売日未定
製作者マーサ・C.ヌスバウム
販売元岩波書店
JANコード9784000227933
カテゴリ文学・評論 » 文学賞受賞作家 » 芥川賞 » 151回-

購入者の感想

大学にも市場原理が浸透し、短期的な成果が期待できる分野が重要視され、それとは対極に位置する人文学は無用の長物と見なされるようになっている。アメリカでも事情は変わらないらしく、これに警鐘を鳴らすためにアメリカの著名哲学者が世に問うた人文学のための弁明。どんなロジックで人文学を擁護しているのか、興味を持ち、読んでみた。

著者は、教育を利益のための教育とデモクラシーのための教育の二つの類型に分類する。前者は、経済成長という国家の目標を最優先し、この目標に寄与する学問に重点的に予算配分する専門教育モデル。このモデルでは、経済成長が最優先課題に据えられるのに対して、分配や社会的不平等や人間的尊厳の問題は軽視される。後者は、批判的思考、省察の能力、他者に対する想像力を涵養することを教育の目標とし、人文学を含む幅広い科目を教育する一般教養教育モデル。多様な人種、文化、宗教で構成されたグローバル社会で世界市民として諸問題に対処するには、外国の文化や宗教に関する幅広い知識、論理的思考、批判的思考、さらには、異なる立場に置かれた人々の心情や願望を想像し理解できる能力が求められる。これらの知識と論理的思考と想像力こそ、人文学によって習得できるものである。 新興国を見れば分かるように、経済成長は必ずしも自由やデモクラシーを必要としない。また、経済成長が自由やデモクラシーをもたらすわけではない。現在、先進国においても利益のための教育へのシフトが見られる。デモクラシーのための教育は追い詰められている。共感と理性に裏打ちされた議論によって恐怖と疑念を乗り越える国々を、敬意と思いやりをもって他人に接することができる人々を、生きる価値のある世界を、人文学が作り上げていることを主張しなければ、それは金儲けにならないという理由で衰退してゆくだろう。

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