クラシックの核心: バッハからグールドまで の感想

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タイトルクラシックの核心: バッハからグールドまで
発売日販売日未定
製作者片山 杜秀
販売元河出書房新社
JANコード9784309274782
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

実に豊富な知識に基づいてバッハからグレン・グールドを語っていく片山先生。
近現代のクラシック音楽から入っていった人であるようで、だからこそここまで俯瞰して巨視的に音楽史を語れるのであろう。そしてそれぞれの作曲家、演奏家の本質的特徴を、他の音楽評論家たちが言及していなかった内容を含みながら、深い洞察を持って紹介している。とくに、ショパン論、ワーグナー論、マーラー論、グレン・グールド論はすばらしく、ここまで音楽家を深く見抜いている識者は他にいない。各音楽家のとりまく社会的状況が考慮されているのが、ただの音楽畑の人ではないなと思わせる。音楽バカの人に是非読んでほしい。豊富な歴史的教養こそ今後の音楽業界に必要となっていくものだろう。そういう教養がないと新しい音楽的段階が生じえないのである。

ショパンとリストのピアニズムの違い。ワーグナーの、芸術と思想が合体した人の生き方そのものを含んだ総合的で全的な巨大性と民族のロマンティシズム。マーラーの現代性(この現代性はますます我々に重くのしかかっている)。グールドがもたらしたクラシック音楽に対するこれからの時代の新しい構え方(録音、映像をとことん活用して音楽を真に極めていく段階)など、非常に示唆に富むものばかりである。

ショパンのピアニズムの可能性(一方リストにはあまり将来性はない)は、「そのとおりだな」と思わせる内容である。マーラーの細かい分析はすごいとしか言いようがない。

現代音楽を専門とする片山杜秀氏によるクラシック界の作曲家、演奏者を評したエッセイ集である。筆者が編集者に語った言葉をまとめた雑誌「文藝別冊」の連載が1冊になった。平易な語り口ながら高レベルの深い内容が語られているのには驚いた。

取り上げられているのは、バッハ、モーツアルト、ショパン、ワーグナー、マーラー、フルトヴェングラー、カラヤン、カルロス・クライバー、グールドの9人。一見するとベートーヴェンが欠けているいるように見えるが、随所で彼のことには触れられているので実質は10人。まったく文句のつけようのない人選である。それぞれの音楽家との筆者の子供の時の接点から話が始まるのだが、これが個人的体験のように見えて、実はその音楽家理解の重要なポイントにつながっていく構成が見事である。たとえば、筆者は幼児の時にテレビ番組「レインボーマン」を観ていてバッハの「トッカータとフーガ二短調」が耳に馴染むのだが、それは決まって悪役の処刑シーンに演奏されたというのだ。そこから、バッハ音楽の宗教性を論じ、同じ旋律を繰り返すカノンやフーガをバッハは重視したこと、それは平等で公平な民主的な思想の反映であることを示す。バッハは平等で対等なコミュニケーションの理想を精緻な設計図=楽譜によって残した。よってバッハが再評価されるには20世紀の到来を待たねばならなかったことを語る。まさにバッハ音楽の核心に筆者の論考は及ぶのである。

他の音楽家についても筆者は同様に論じながら、それぞれの音楽家のもっとも重要な特質を端的に示す。モーツアルトは、構造や起承転結は無視して、心に浮かんだ感覚を言語ではなく音として記録する。すなわち彼は刹那的なものを追っている。それが現代の風潮に合っているので人気を集めているのだ。ショパンはイタリア・オペラのベル・カントをピアノの音で再現しようとした。ワーグナーはシェイクスピアとベートーベンを一体化させた総合芸術をめざした、等々。その指摘はまさに各音楽家の「核心」であると頷けるもので、クラシック愛好家の多くにとって「眼からうろこ」の指摘となるであろう。

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