80年代映画館物語 の感想

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参照データ

タイトル80年代映画館物語
発売日販売日未定
製作者斉藤 守彦
販売元洋泉社
JANコード9784800305299
カテゴリジャンル別 » エンターテイメント » 演劇・舞台 » 演劇

購入者の感想

斉藤氏の前作「映画宣伝ミラクルワールド」は快著だった。70年代の滅茶苦茶なハッタリ宣伝の裏話が網羅され、記憶の片隅に眠っていたあれやこれやが甦った。
今度の新刊、テーマは映画館だ。この時代、確かに東京は文化の中心だった。近隣の県に住んでいた私は、それを追いかけるために週末ごとに東京まで足を運んだ。そうしなければならない熱気が封切り初日のロードショー館からミニシアターのレイトショー、名画座の特集にまでひしひしと感じられた。
そんなことを皮膚感覚で思い出させる文章が21章、そして最後に80年代を通して東京で上映された作品の一覧が30ページ。圧巻だ。
この構成、同時代を映画館ですごした人間にとっては堪らないものがあるだろう。
当時流行した「全米ナンバーワン大ヒット」の宣伝コピーの裏を暴く章も、前著のつながりから興味深く読むことができた。

 著者は1961年生まれの映画ジャーナリスト。前著『映画宣伝ミラクルワールド 東和ヘラルド松竹富士独立系配給会社黄金時代』の姉妹編ともいえる今回の書は、その題名のとおり1980年代の(東京の)映画館がどういう戦略を立てながら映画上映を進めていったかについて、当時を知る関係者を丹念に歩いて取材した労作です。

 日本の長い映画興行史において1980年代というのは大変特徴的な時代でした。
 老朽化した大型老舗映画館が閉じる一方で、ビルの中に複数のスクリーンを構える、のちのシネコンへとつながるような映画館が新規に立ち上がった時代。
 ミニシアター型映画館がブームとなった時代。
 テレビ局が映画製作に積極的に乗り出した時代。
 伊丹十三や北野武など異業種の人々が監督業に参入した時代。
 全米の興行収入ランキングが宣伝の惹句として盛んに使われるようになった時代。
 そうした、先行時代とは異なる映画上映の形態が現れた80年代に、劇場関係者がどう立ち回ったかに関するひとつひとつのエピソードは、読んでいて興趣が尽きませんでした。

 『ジョーズ』は当初、B級映画だと思われて『死の海峡』という邦題のもと、消化番組劇場的な小さな映画館での上映が予定されていたこと。
 シネマスクエアとうきゅうのあの座り心地があまりに良い椅子が、当時ヘラルド映画試写室で使われていた1脚7万円のフランス製のものだったこと。
 それまでは、映画にちょっとでも映っていればそれが物語の本質でなくても針小棒大に宣伝に使ってしまうことがあったものを、ジブリ鈴木プロデューサーが頑として拒否したこと。
 六本木という交通の便が悪い場所にシネ・ヴィヴァン六本木というおしゃれな映画館をあえて作ったのは、映画業界の<常識>に拘泥しないセゾングループの総帥・堤清二の発案だったこと。

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