若き日の哀しみ (創元ライブラリ) の感想
参照データ
タイトル | 若き日の哀しみ (創元ライブラリ) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ダニロ・キシュ |
販売元 | 東京創元社 |
JANコード | 9784488070724 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » その他の外国文学 |
購入者の感想
『若き日の哀しみ』(1969)は、他の二つの小説『庭、灰』(1965)、『砂時計』(1972)とあわせて、キシュ自身により自伝的三部作と呼ばれている。そしてこの『若き日の哀しみ』はあくまでもデッサン的なものであり、『庭、灰』さらに『砂時計』として文学的に昇華されていく、とキシュ自身は語っている。
独り言のように、少年アンディ(=ダニロ・キシュ)の日常が19編のショートショートとして詩情豊かに語られていく。
その中でも『少年と犬』が、アンディの一番の友達で彼の言葉を理解し、世話をしていた牛がいなくなった時、一緒に家出をしようとまで考えてくれた愛犬ディンゴとの別れと死が、一番悲しかったです。
この短編集を読むために知っておいた方が良いと思われる若干の予備知識をまとめると次のようになります。
ダニロ・キシュは1935年にユーゴスラビアのセルビア北部の町に生まれ、戦争中はユダヤ人である父の故郷、ハンガリーで暮らす。母親はセルビア正教徒のモンテネグロ人で母方の祖父はモンテネグロで生活していた。二歳年上の姉がいる。父親は1944年にアウシュビッツ収容所に送られ、そのまま二度と帰ることはなかった。
キシュが4歳の時、第二次大戦が勃発、6歳の時には、第三次反ユダヤ法が施行されて、ユダヤ人とキリスト教徒との結婚が禁止される。キシュは反ユダヤ法が施行される前にセルビア正教の洗礼を受け、それが彼の命を救うことになる。
子供だった日々、哀しみだけを感じながら生きた人は、大人になっても同じ哀しみを抱きながら生き、そして年老いてもなお変わることなく、その同じ哀しみを噛みしめながら生きていくのかもしれない。
たとえその哀しみを表す術を持たないとしても、あなたも、もしもそうしたお一人なのでしたら、ぜひ一度読んでいただきたいと思う一冊です。
独り言のように、少年アンディ(=ダニロ・キシュ)の日常が19編のショートショートとして詩情豊かに語られていく。
その中でも『少年と犬』が、アンディの一番の友達で彼の言葉を理解し、世話をしていた牛がいなくなった時、一緒に家出をしようとまで考えてくれた愛犬ディンゴとの別れと死が、一番悲しかったです。
この短編集を読むために知っておいた方が良いと思われる若干の予備知識をまとめると次のようになります。
ダニロ・キシュは1935年にユーゴスラビアのセルビア北部の町に生まれ、戦争中はユダヤ人である父の故郷、ハンガリーで暮らす。母親はセルビア正教徒のモンテネグロ人で母方の祖父はモンテネグロで生活していた。二歳年上の姉がいる。父親は1944年にアウシュビッツ収容所に送られ、そのまま二度と帰ることはなかった。
キシュが4歳の時、第二次大戦が勃発、6歳の時には、第三次反ユダヤ法が施行されて、ユダヤ人とキリスト教徒との結婚が禁止される。キシュは反ユダヤ法が施行される前にセルビア正教の洗礼を受け、それが彼の命を救うことになる。
子供だった日々、哀しみだけを感じながら生きた人は、大人になっても同じ哀しみを抱きながら生き、そして年老いてもなお変わることなく、その同じ哀しみを噛みしめながら生きていくのかもしれない。
たとえその哀しみを表す術を持たないとしても、あなたも、もしもそうしたお一人なのでしたら、ぜひ一度読んでいただきたいと思う一冊です。