能を考える (中公叢書) の感想

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参照データ

タイトル能を考える (中公叢書)
発売日販売日未定
製作者山折 哲雄
販売元中央公論新社
JANコード9784120045646
カテゴリジャンル別 » アート・建築・デザイン » 日本の伝統文化 » 歌舞伎・文楽・能

購入者の感想

仏像の貌は若々しいが、古い神像には森厳な老いの表情が漂っている。
能には、弱者を慰め苦しみ嘆く人間たちに救いの手を差しのべるシテの役割を担う老賢者<翁>の思想がある。

柳田國男は、日本人は古来人間が死ねば周縁にある山や丘や森に昇って祖霊となりさらに、供養を受けてカミとなる。そして、正月や盆に里に降りてきて村人を祝福する。また、カミは様々な形をとり氏神として祀られるようになったと言っている。

谷崎潤一郎は、由緒あるお寺の古式に則った仏事に於ける皺だらけの老僧の皮膚と僧の纏う金襴の地質と灯明の明滅とがよく調和し荘厳味を増している。黄色人種である日本人特有の赧みがかった褐色の肌が黄色味を含んだ象牙色の地顔と取りわけ濃い緑色や柿色の素襖、水干、狩衣の類と実に良く似合うと指摘した。
能楽に於いても、黄色人種の肌は渋い緑と渋い茶とその二つの間色が照り合い創り出す独特の美について述べている。
しかしそれは、近代の照明の下ではその実感は飛び散ってしまうだろう。

折口信夫は、日本文芸の本質は、「牴牾」(ていご)<牴は触る、牾は逆らうであり両義性を持つ>=「もどき」であり、その芯を貫いていると言い切っている。
歴史の本質も、繰り返されるリズムの中にあるという認識である。
具体的には、まれびと(神)の出現(牴)と、それに対応して現れる土地の精霊(牾)が果す役割に注目する。神と霊は、相互参入する。
能にシテとワキという構造があるが、シェイクスピア劇に登場するヒーローと道化のような二元的構図(個と個)は採らない。
精霊は、何時しか神の地位を侵すことがある。そして、人も霊的なものであり神とも霊とも人ともあの世とも往来する。
能面も両義性を持つ。
世阿弥は、能の基本は「物まね」であると云った。

和辻哲郎は、能に於ける「物まね」の本意は、老を演ずるときは出来る限り老らしくなく演技する事によって老に近づくこと。女についても同様で「らしさ」の否定によって模倣する。
ところが、人形浄瑠璃に於いては、木偶なるものに衣裳を着せて生ける者の如く身振りさせる。

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