日本語活字印刷史 の感想

近年、近世出版の研究が盛んになり、充実した成果を出しているが、近世版本と近代活字本の溝を埋める研究は出てこなかった。本書は日本語出版史の中で、活字出版に照準を合わせて、通史的に論じた画期的な研究書である。ここには文学研究と語学研究、そして印刷技法等の工学的研究を架橋する意欲的な姿勢がうかがえる。まさに活字研究の金字塔と言ってよかろう。個人的には、嵯峨本の活字版組を論じた章に感銘を受けた。