イタリア 24の都市の物語 (光文社新書) の感想

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参照データ

タイトルイタリア 24の都市の物語 (光文社新書)
発売日2010-12-16
製作者池上 英洋
販売元光文社
JANコード9784334035990
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

NHKのイタリア語講座テキストに連載されたエッセイをベースにした本文は199ページだが、随所に多くのカラー写真が掲載されているため、比較的肩の凝らない気軽な読み物になっている。また著者は美術の専門家だけあって、多くの美術作品や建築についての解説も充実していて、実際にイタリアで実物に接する時に感動を新たにしてくれるだろう。本書では旅行者が滅多に訪れないようなマイナーな町も数多く扱われているので、イタリアの地方都市紹介のガイド・ブックとしては画期的だが、難を言えば一冊の新書に24の都市は少し多過ぎる。またそれぞれの登場人物や町の歴史がクロノロジカルに編集されていないので、24の都市が点に留まって全体が繋がって見えてこない嫌いがある。長い時代小国家に分かれて統治されていたイタリアであれば尚更だ。町の数を半分にしてもう少し掘り下げた説明、例えば取り扱われている事件の後日談や他の都市との関係、その場所への具体的な行き方や地図等があればエッセイとしても旅行ガイドとしてもより実用的な内容になったに違いない。いずれにしても人と文化、とりわけここでは美術を結びつけて歴史を語る著者の試みは、過去と現在のイタリアを理解するために少なからず役立ってくれる。

イタリアの旅行ガイド・ブックや料理、ファッションに関する情報誌に至るまで、こうした類いの書籍は今や巷に溢れているが、それは往々にして日本人の好みに合うように、また合わない部分は単に奇異なものを見る視線で書かれてしまうのは残念だ。何故ならそれは本来のイタリアを理解することにはならないからだ。他国の文化や生活習慣を理解することはそれほど簡単なことではないが、イタリアを一連の歴史の中で捉え、総合的な知識を得ながらそれらを解き明かす手がかりになる読み物として、本書はその入門編といったところだ。尚164ページに書かれているベッリーニ作曲の『カプレーティ家とモンテッキ家』は歌曲ではなく歌劇の誤植だろう。

イタリアの24の都市にまつわるエピソードとともに、その都市の建物、美術作品、風景などのカラー写真が掲載されている。あまりイタリアに詳しくない私には、サン・レオ、シラクーザ、タオルミーナ、ルッカ、フェッラーラ、サン・ジミニャーノ、チェファルー、マテーラ、パレルモ、ボマルツォ、オルヴィエートなどなど、これまで全然なじみがなく名前を知らない都市のほうが多く、ときおりアッシジ、ヴィンチ、ティヴォリ、マントヴァ、カノッサなどの知っている地名が登場するとうれしくなった。
 美術史の専門家である著者がとりあげるその都市にゆかりのある人たちの織り成す物語が面白い。通常の観光ルートからはずれた場所にある都市が多いので、イタリアに行く機会があってもその都市を訪れることはなかなかできないであろうが、個性豊かな都市があふれるイタリアの魅力の一端を知ることができた。

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