乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス(ハルタ)) の感想

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参照データ

タイトル乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス(ハルタ))
発売日2015-02-14
製作者森 薫
販売元KADOKAWA / エンターブレイン
JANコード登録されていません
カテゴリ » ジャンル別 » コミック・ラノベ・BL » コミック

購入者の感想

この巻はアミルさんは巻末の番外編にちょっとしか出てきません。
西アジアの風俗を調査しているスミスさんが移動した先、異国ペルシアでのまた別のひとりの乙嫁、アニスさんが主役です。

金持ちの妻がヒマを持てあまして寂しくむなしくなってしまう…というのは、現代日本人から見ると、うらやましさや、贅沢で楽でいいじゃないという放り出したくなる気分もあるとは思いますが、当時のセレブ女性としては、家事や育児さえ女中さんがやってくれるという、まるで自分が存在しないような日々だったのでは。
貧乏人が物を得たらありがたみがわかりますが、元々その辺にすべて揃っていて、何もやることがないというのは、その状態しか知らなかったら空虚な気分になるかもしれません。

気分転換できるような旅行や外での趣味(友人宅でのお茶会や、テニスクラブとか乗馬とか?←セレブのイメージが貧困ですみません)も許されなさそうな閉鎖的な世界で、唯一発散できるのが女性専用銭湯。そして女性を社会から切り離してお手元に大事に置いておくことが男性のステータスなら、その女性同士が現代よりもさらに強く連帯する「姉妹妻」という習慣も納得です。

「姉妹妻」という習慣、この漫画で初めて知りました。

第二夫人、第三夫人…を持つことの可否も、女性が自立するのがかなり難しい時代では、この巻のシーリーンさんのように旦那の親も老境で今更働けず、自分も社会的に仕事に就けない、生活保護制度も全く無い時代だったら、余裕のある男性が彼女とその家族を迎え入れ、本妻と偏り無く愛していくというのがルールとしてあってもそれはそれでありだと思います。
そうしないと、一家の主が病気や戦争で死んでしまった場合や働けなくなった場合、家族はどうにもなりませんよね。

アニスさんは、「旦那のお金を用いて」人を助けましたが、自分の持ち物が一切無いその時代の女性ではそうすることが当たり前(それしかできない)し、この出来事でやっと自分の境遇というものを肯定できたのではないでしょうか。
民間の互助保護制度とでもいうのか、そんな異国の習慣を、面白く読みました。

7巻は再びスミスの旅の途上での第4の乙嫁アニスの物語です。舞台は変わってペルシア、富裕で優しい夫、子宝にも恵まれ傍目には誰もが羨むような境遇のアニス、けれども心の中に何かしら空虚さを抱いていた彼女が望み求めたものとは何か。そういったテーマでお話は進んでいきます。

6巻のアミル編が砂塵渦巻き鉄砲大砲ドンパチに刀、弓矢で血しぶき上がる迫力満点な展開だっただけに、本巻全編を通じて流れる穏やかさや百合的要素に戸惑いを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

画調はすこしあっさり系に変えられているようですが、描き込みは今まで通りしっかりされていますし、建物は見事なペルシア様式で描かれておりそのほかの事物の考証もきちんとされていて、何より本巻のメインといえる「姉妹妻」なんて本書を読まなかったら知らないままのようなことをきっちり調べて描くあたり作者に手抜きはなく、描き方の手法を別の角度に変えただけであって今までの「乙嫁語り」との連続性は断絶していないと思います。

話の展開がいたって穏やかで予定調和なハッピーエンドに違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、第2の乙嫁タラスや第3の乙嫁ライラとレイリとこれまでの乙嫁たちもさまざまなエンディングを迎えていることを考えれば、アニスのお話もアリかなと思います。それだけ作者の引き出しが多いということの実証といえるのではないでしょうか。あるいは作者が描きたいことがたくさんあり過ぎて描いていったらこうなったということだと思うのですが。

本巻は「乙嫁語り」の中では従来といろいろな意味で変わった点があるので賛否両論いろいろとお感じの方がいらっしゃると思います。けれどもそれはこんな描き方もできるのだという作者の力量とこの物語の幅の広さを知らしめるもので、これはこれでよいのだと個人的には感じました。そしてアニスの感情の機微が彼女の表情にきちんと描かれているところが本巻の一番の魅力ではないかと感じました。読んでいて作中の表現にもありますがまるでそよ風に吹かれるような気分でした。

服装も一変、後書きでも描かれてますが全体的にシンプルな絵柄ですね。
しかし、なんというかネチっこさの様なものを感じて、いつもの爽快感はありませんでした。
短編集で読んだ水着の奥様の話の時にも感じたネバネバ感。
次巻は私の好きなパリヤさんの話ということで、次に期待です。

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