A Tale for the Time Being: A Novel の感想

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タイトルA Tale for the Time Being: A Novel
発売日2013-03-12
製作者Ruth Ozeki
販売元Penguin Books
JANコード登録されていません
カテゴリ洋書 » Special Features » By Authors » Literature & Fiction

購入者の感想

カナダ ブリティッシュ・コロンビアのさびれた沿岸に住む作家のRuth(著者本人)は、ビーチに打ち上げられていた大きなゴミを捨てるために持ち帰る。だが、中からは出てきたのは腐った食品ではなく、プルーストの『’ la recherche du temps perdu(失われた時を求めて)』と手紙などだった。さらに驚いたことには、プルーストの中身はフランス語の原書ではなく、日本語で書かれた日記だった。日系人のRuthは、自分が読めるペースですこしずつこの日記を読んでゆくことにする。

日記の持ち主は東京に住む15歳の少女Naoである。父がシリコンバレーで働いていた頃には、家族三人はカリフォルニアで幸福に暮らしていた。だが、父は会社を解雇され、ドットコムブームも終焉して家族は日本に戻る。父が再就職口を見つけられないために家族は貧困に陥り、公立学校に通いはじめたNaoは残酷で執拗ないじめにあい、鬱に陥った父は自殺未遂をくり返す。Naoの唯一の心の拠り所は、父方の曾祖母の尼だった。

最初のうちは好奇心だけで読んでいたRuthだが、読み進めるうちにNaoの世界にのめりこんでゆき、彼女を助けなければならないという強い衝動を感じる。そんなRuthに、論理的な夫Oliverは、日記が10年以上前に書かれたものだということを指摘する。それでもRuthは現在進行形の切迫感をぬぐい去ることができない。

タイトルのTime Beingは、道元の時間論を示したものであり、仏教徒の著者らしい世界観と時間論が本書の重要なテーマになっている。途中から現実と日記の世界が融合してくるマジックリアリティの手法も、登場人物のRuthとOliverが、実際に著者と著者の夫だということも、このテーマをリアリスティックにしている。

文章、テーマ、読みやすさ、登場人物の描き方、ユーモア、涙、読後感、すべてに文句のつけようがない豊潤な傑作である。今年のブッカー賞の最終候補になっているが、ぜひ受賞して欲しいものである。

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