プレ・デザインの思想 (TOTO建築叢書) の感想

プレ・デザイン。技巧的なアーキテクチャーを作成する前に、まずは「本当に必要なことは何か」を明らかにすることが大切。海外だと当たり前なことですが、日本ではどうもそうではないようです。　物質的でカタチあるモノに大しては、それなりの金額を支出するのですが、全体のプランニングや最適化など「コンセプチャル」に関わるお仕事に対しては、如何せん支出を渋る。金額が大きなプロジェクトほど、初期の設計思想・コンセプトが重要となるのはよくよく理解されているはずのこと。「外見が美しい、内装が綺麗」だからといって素晴らしいアーキテクチャーであるとは限りません。本当に必要なことを満たしているアーキテクチャーこそ、評価されてしかるべきでしょう。建築物を作った後の「実質的な評価」はもっと共有・研究されてしかるべきことでありましょう。本質を突き詰めず、その場の雰囲気でかっこよく作り上げてしまう能力は、ときに好ましくないものを生み出してしまうことも。　　

「設計以前のワークに敬意・オマージュが払われてしかるべきだ」とする考え方が根付くまでには、なかなかに険しい道が待ち受けているように思います。優秀な日本の建築家が、こぞって海外に出て行ってしまうのではないかと危惧してしまいます。