The Devils of Loudun の感想

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タイトルThe Devils of Loudun
発売日2008-01-22
製作者Aldous Huxley
販売元Vintage Classics
JANコード9780099477761
カテゴリ » 洋書 » Special Features » all foreign books

購入者の感想

17世紀前半のルーダン(フランス)で実際発生した悪魔付き事件を扱った昏く重厚なノンフィクション。大量の資料に基づく分厚い実証に支えられ、ハクスリーの民俗論、宗教論、社会論が巨視的に展開する。著者が世紀末生まれのインテリだけあって、言語の格式も高い。
根底にあるのは、ワイドショーのネタになりそうなコミュニティ内の劣情曼荼羅である。ウルスラ会の修道院長が新参のウルバン司祭に横恋慕し、奇怪な行動を取り出す。ウルバンが普通の男ならこんなことにはならなかったのだが、悪いことに、彼は今でいう「セクシーなスター」だった。尼僧長は名家の令嬢だが「せむし」で不遇感が強い。プライドの高い妙齢の女性が率いる修道院に沈潜した性欲が、インテリで美男で反体制でモテモテの生臭司祭の出現により暴走を始める。
尼僧長の下半身的モヤモヤは些細と言えば些細な話だが、これが最初のドミノになり、ウルバン司祭自身の傍若無人が加わり、父親の真っ当な怒り(ウルバン司祭に遊ばれた娘の父)が加味され、はたまたコミュニティ内の思惑や同性の嫉妬、「スター」に対する大衆的サディズムetc.が微妙に絡んでくる。破戒僧がごく当たり前の当時の風潮もある。尼僧たちの集団ヒステリーが異端審問に発展し、国家的意志(王権拡大)が蠢き出す。
小さな野火が、折よく乾いた空気と思わぬ強風に煽られ、業火になっていく。この偶発の連結はいったいどこで寸断可能なのか、読み手は見当もつかない。このように読者に「無力」を自覚させる読み物は一流だと感じる。二流の読み物は、読み手の中に有りもしない能力や知性を錯覚させる。
ハクスリーは17世紀を暗愚の時代とは言わない。代わりに、読者に時代と人物を理解させる。時代の地層を間断なく掘り起こし、多方面から講釈を加えていく。著者の語りのスタミナと知性の躍動、そしてやや斜めに飛んでいる拘りが実に濃ゆい読書体験を提供してくれる。

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