ピアノ一丁! の感想

通算22枚目となる国府弘子の新譜「ピアノ一丁!」。LIVEではトリオで時に激しくセッションする印象がある国府弘子だが、今作はピアノとピアニカだけで奏でられている。シンプルで至極のメロディが心地よくコクブヒロコワールド全開である。オープニングテーマは彼女らしく、飾り気のない展開がどうにも楽しい。まさにこれから始まる「ピアノ一丁!」にふさわしい幕開けだ。

「ユー・チューン・マイハート」このタイトルに込められたものは、国府弘子自身の手によるライナーノートにある。これを読んで聞くとどうしても目頭が熱くなってしまう。カバーが2曲続いたあとは、オリジナルゾーンへ。ピアノテラピーの静かなサウンドはまさに、音楽テラピー。おそらくは彼女が病に苦しんでいた頃の楽曲なんだろうと思う。その辛さと乗り越えようとする強い意志と希望を感じるゾーンだ。

そして今作で最も気に入ったのが「サクセス・ムーン・ダンス」。確か以前のアルバムにトリオ演奏で入っていたと思うが、ピアノだけだとまた逆に深みが出ている。MJのヒールザ・ワールドを彷彿とさせる美しく、リズミックなイントロからクライマックスそして最後の超ピアニシモまで、どこにも手を抜いたところがない。とはいえ、聴く方はリラックスできる珠玉の作品だ。

ビートルズ、ガーシュインのカバーはいかにも国府弘子らしいアレンジメントが見事。原曲とそれを生みだしたアーティストに対する限りない尊敬が伝わってくる。そしてまたオリジナルゾーンへ。指のトレーニングが小曲となったという「ブラッド・サーキュレーション」は、超絶技巧を堪能できる。こうした強くて確実なタッチがあるから、国府弘子は優しい曲そしてピアニシモを奏でられるのだろう。