情熱の伝え方 の感想

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ビジネス関連書の帯に
「窓際族寸前までなった僕」「補欠入社の僕」など意表を突く言葉を見れば
賢明な読者ならこう思うだろう。

「所詮は出版社が考えた『今時の売らんが為』の刺激的な言葉だろう」と。

しかしこの本は違った。

今や誰もが知る人気番組「情熱大陸」のプロデューサーである著者は
かつて本当の「ネクラ・人見知り・ネガティブ性向」、
言葉は悪いが不良社員よりも扱いに困る「出来損ない」社員だった。
（因みに著者は自身のことを「凡人」と称してますが・・・）

そんな一時は取引先へ出向にまでなった著者が、
「情熱大陸」のプロデューサーになるまで、どのように組織の中で生き抜いたのか？
そして番組「情熱大陸」の取材中に生じた放送事故寸前の数々の危機的状況を
どうやって乗り越えたのか？
そんな悪戦苦闘のヒリつく道のりを、
著者は型破りな上司や仲間の紹介を交えながら気持ち良いほどバカ正直に語っている。

組織は必ず人を試す。
ビジネスの世界で生きる人間なら器以上の大役を任される時が突然訪れる。その時、表面上のテクニックは通用しない。
役立つのは著者が以下の様々な出来事の中で実践した「カッコ悪くも必死に前に進む覚悟」に他ならない。

本書前半では手柄の無い記者時代に著者が体当たりでスクープし、ギャラクシー賞にも選出された
「追跡！謎の募金集団」や「北海道物産展の偽業者を暴く」の裏側が紹介される。
その過程が如実に描かれておりスリル感満載だ。

後半では導火線に火がついたように切迫した「情熱大陸」の制作過程が明かされる。
放送中も編集作業が行われている事、出演者の放送当日の状況に合わせて何パターンものＶＴＲが用意されている事などは、
スタッフの番組作りにかける情熱がリアルに伝わり、視聴者に番組の新たな楽しみ方を与えてくれる。

またその取材過程で知った「野球・王貞治のふとした対応術」「くまもんのデザイナー・水野学の＋αの仕事術」