基礎情報学―生命から社会へ の感想

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参照データ

タイトル基礎情報学―生命から社会へ
発売日販売日未定
製作者西垣 通
販売元NTT出版
JANコード9784757101203
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » IT » 情報社会

購入者の感想

 「基礎情報学」とは、「そもそも情報とは何なのか」を明らかにしようとする基礎研究という意味である。C.シャノンを始祖とする従来の情報学の枠組みでは、「意味解釈」の問題をおおよそ捨象した「機械情報」(解釈の余地のない抽象的なパターンとしての情報)しか扱われてこなかった。西垣はこれに異を唱えて、生物と機械の違いを明確にした上で、「生命体にとっての情報」を中心に据えた情報学を打ちたてようとする。
 生物と機械の違いを説明するために導入されるのは、生物学者のH.マトゥラーナとF.ヴァレラによって70年代に提唱された「オートポイエーシス理論」だ。ただ、オートポイエーシス理論自体は刺激的な仮説なのだが、西垣の「基礎情報学」においてそれが情報理論へとうまく接続されているとは言い難いので、西垣の生命‐情報モデルについての詳しい説明はここでは省いておく。
 (※ オートポイエーシス理論そのものについては、河本英夫という日本の代表的研究者やマトゥラーナ&ヴァレラの著作を読むべき。)

 というか、オートポイエーシスなど持ち出さなくても理解できる内容がほとんどだ。西垣が繰り返し強調するのは、「そもそも情報は伝わらない」ということである。情報は、「小包のような実体で、スポンと自分の心のなかに入ってくる」ようなものではなく、受け手の解釈によってはじめて意味を持つ。だから、記号表現とそれが指し示す意味内容の対応規則(コード)が、あらかじめ送信者と受信者の間で正確に共有されていない限り、「情報を伝える」ことはできないのだ。したがって、たとえば一種の権力作用によって「斉一な意味解釈のためのコード」を人々に強制しなければ、そもそもコミュニケーションを始めることができないのである。
 ということは、物理的パターンとしての機械情報を伝達・蓄積・検索する技術力がいかに進歩したところで、人間のほうの解釈能力が追いつかなければ、大した意味はないということである。また、解釈のコードが(共同体の慣習的秩序などによって)適切に共有されていなければ、行き交う情報が増えれば増えるほど相互「誤解」が深まるということにもなりかねない。

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