スリランカの悪魔祓い (講談社文庫) の感想

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タイトルスリランカの悪魔祓い (講談社文庫)
発売日2010-07-15
製作者上田 紀行
販売元講談社
JANコード9784062766982
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 民間信仰・俗信

購入者の感想

 文化人類学者の著者がスリランカで観察した悪魔祓い ―― 悪魔に憑かれてしまった人を「癒やす」儀式。悪魔憑きというのは現代日本で言う鬱病のような無気力症状である。とり憑いた悪魔に出て行ってもらい、病人を村の共同体に復帰させるには、祈祷師を呼んで村人総出の賑やかな儀式を一晩中執り行うほどの、莫大なエネルギーが必要らしい。ちょっとしたカウンセリングくらいで鬱が治らないのも肯ける。土着的な悪魔祓い儀式にブッダ信仰が混在している点も、なるほどスリランカらしく興味深かった。悪魔祓いの儀式の生き生きとした描写はたいへん読み応えがある。
 しかし、そこから引き出される著者の洞察、というか「処方箋」が、ありがちな「現代文明批判」でつまらない。それどころか目に余る与太話は有害かもしれない。たとえば著者は、癌のサイモントン療法は、スリランカの悪魔祓いと「似ている」と言う。サイモントン療法とは、癌が治るというポジティブなイメージには癌への治療効果があるとするイメージ療法だ ―― そう著者は紹介している。しかし、無気力症状の治療が精神への働きかけ(= 悪魔祓い)によるというのは理解できるが、それを癌治療へと拡大するのは無理がある。実際、アメリカがん協会によれば、サイモントン療法は、癌によるストレスや痛みの軽減には効果があるが、癌そのものの治療効果があるという科学的証拠はないという。ほかにも、著者は、現代医学にはほとんどプラシーボ効果(思い込みによる治癒効果)しかないと錯覚させるような記述をしたり、右脳の活性化がどうしたこうしたと疑似科学的な主張を繰り広げたりする。(非西洋的な民間療法には現代医学には計り知れない効果があるのかもしれない。しかし著者はその確かな効果をどうやって調べたんだろうね?)
 スリランカの悪魔祓いから我々が受け取るべき知恵があるとすれば、それは誰でも言えそうな、しかも実際には有害無益の「現代文明批判」ではないはずだ。たとえば、著者はこう書く

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