ふたりの距離の概算 (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトルふたりの距離の概算 (角川文庫)
発売日2012-06-22
製作者米澤 穂信
販売元角川書店(角川グループパブリッシング)
JANコード9784041003251
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » や・ら・わ行の著者

購入者の感想

ライトノベル要素がより薄くなり、一般文芸のジャンルに馴染んだ作品。時間軸、そしてストーリー全体に深く関わる新しい登場人物を繊細に描いた仕上がりとなっています。
個人的には以前までの古典部シリーズも好きでしたが、今作のような一般文芸を読んだ感覚に近い作品も好きです。刊行ペースに長い期間があくので、書き方が変わるのはその影響なのかもしれません。

第一作からかなり時間が経過しました。できれば前作までを読み、登場人物の個性を把握した上で本作を読むことをお勧めします。

古典部の四人が二年に進級し、新入生勧誘週間での出会いを
きっかけに一年生の大日向友子が仮入部し、
すぐに四人と打ち解けただけではなく、奉太郎の誕生日会、
オープン前の従兄の喫茶店でのモニターと、
彼女主導のイベントまで行なうような仲になったにもかかわらず、
本入部締切直前になって入部しないことを宣言した理由を探るべく、
奉太郎が学校行事である20kmマラソンで走りながら回想し、
答えを導き出そうとするのが今回のおはなし。
どこを切り取ってもネタバレになってしまいそうなので、
詳しく言及するのは避けますが、人と人とのリレーションシップって、
一体何なのだろうと考えさせられるいう、小学校の頃の道徳の教科書の
物語の読後感に似た感覚に陥りました。
また、第一作『氷菓』の頃は本当の意味で朴念仁だった奉太郎が、
今度は(多くの人が誤解しているであろう)違う意味で朴念仁に
なっているところも気になります。

邦題『ふたりの距離の概算』には様々な意味が含まれ、
英題『It walks by past』も、ストーリーの進め方を的確に表した、
良いタイトルかと。
是非、この話もいつの日か京都アニメーション制作で観てみたいものです。

「日常の謎」+「安楽椅子探偵」が骨子ながら
舞台を共学高校に置き、
ライトノベルの装いを纏うことにより
アクティブな展開を造ることに成功している
「古典部シリーズ」第五弾。

本巻は、マラソン大会という激しく動いていながら、
探偵という意味では動けない物理的時間的制限の中
ゴールまでに謎を解決するという
パズル的推理がテクニカルに完成度高い。
(その分、犯罪者役の新入生の動機の切迫感の低さや
ちょっと強引な推理推測もあるのだが・・・)

前作短編集で匂わされた、
主人公たちの青春モノならではの人間関係の深まりが
本巻でもゆっくりと進展していることを、
さらりと示している点は、かなり好感度高し。

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