ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫) の感想

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参照データ

タイトルここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)
発売日2014-04-10
製作者山内 マリコ
販売元幻冬舎
JANコード9784344421882
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » や・ら・わ行の著者

購入者の感想

このセリフだけで星5つ。10分位爆笑が止まらなかった。
いまレビュー書きながらも笑ってしまう。

「リトルモアから写真集出したかった」
「俺の魂はいまも高円寺を彷徨っている」

いやあ、名言いただきました!
出戻りサブカルカメラマンの心理描写がうまい。

ただ今はわかる。あなたが高円寺の商店街を徘徊し、安酒を飲んでる間にも、
藤代冥砂は山の手線の内側で、今の地位を築き上げるために必死に頑張ってたんだよ、と。

椎名という地元、高校内ではスターだった男を軸に描かれる地方で生きる女性たちを描いた短篇集。
地方ということで、サイタマノラッパーにもにてますね。
キャラ設定もうまく、サッカーもJリーグですらない、実業団に入るという、非常に微妙な位置。
箱庭のような学校の中ではダントツでも、外の世界に出れば大したことじゃないんだよね。
読んでいて、なぜ自動車教習所の講師になったのかも、なるほどと納得。

文化を知ってしまった不幸により、田舎では満足できなくなる。
私の居場所はここじゃない!

タランティーノも知らないんだろうと兄を見下すwww
自分では特別なアンテナを張っていると思って渋谷にトーク・トゥー・ハーを観に行ったら、満員でびっくりした。
あれ?トレインスポッティングを渋谷へ並んで観に行った自分がいるんだけど・・・

今だから冷静に振りかえることができるけど、東京に出て、どうすんだと。
結局サブカル糞野郎として消費者になるしかない。

「迎えに来て」ということは自力で東京で居場所を作れないということだから。
西原理恵子の上京ものがたりと正反対の姿勢。なんかクリエイターになろうとしてるわけでもないし。

筆者と同年代で、田舎の高校に進学し、サブカルに現実逃避した自分にはとにかく刺さる。

うまくまとまらないんですけど、色々な記憶、羞恥心、後悔のようなものが湧き出てくる面白い本でした。

地方に生まれ育った人間には、都会に闇雲に憧れる時期がある。

「都会に出れば退屈な自分も変われるはず。」
「都会に出れば楽しくて素晴らしいものがたくさん待っているはず。」

ーー根拠のない想像が幻想に過ぎなかったことに気がつくのは、青春をずっと通り過ぎてからだ。

これはそんな「田舎の女の子たち」のお話。

章ごとに主人公が代わる短編連作の形式を取っているが、面白いのは後ろの章に進むほど時系列が過去に遡って行くこと。そして各章の主人公たちに繋がりが希薄なこと。

おい待てよ、それでは短編連作とは呼べないじゃないか、と思われるかも知れない。だが各章を通して語られる唯一の人物「椎名」がこの物語の繋ぎになっている。

カッコ良くて面白くて、勉強そこそこ、スポーツ万能。
小中高とモテる男子の王道を行っていた彼は「女子はみんな椎名と仲良くなりたかった」と言われるほどの人気者。

だがそんな椎名は一章で冴えない30男として登場する。青春時代のアイドルの転落に肩を落とす主人公。現実ではよくあることだ。

物語のシンボルとも言うべき椎名は章を重ねるごとに若返っていき、次第に「魅力的だった」人物像が浮き彫りにされていく。

構成は見事で、読み進めるうちにまるで自分がタイムスリップしたかのような感覚に襲われる。

「チョコレートと一緒に口に入れたガムみたいに溶けて」
「生温かいババロアの中に、とろけていくような甘い眠りだった」
絶妙に回りくどい小洒落た比喩も、甘ったるい女の子たちの内面を見事に表現している。

田舎で生まれた女の子には、結婚して、子供を産んで、というステレオタイプな生き方しか選べない。
この物語に登場する「女の子」たちは皆、それはごめんだと都会に憧れ、逃げ場を求める。

実際は凡庸に見える人生にもそれぞれの苦しみがあり、それぞれの幸せがある。
根拠のない自信と自尊心に満ちあふれた幼い彼女たちには見えないもの。

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