フランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ (中公新書) の感想

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参照データ

タイトルフランス現代思想史 - 構造主義からデリダ以後へ (中公新書)
発売日販売日未定
製作者岡本 裕一朗
販売元中央公論新社
JANコード9784121023001
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 西洋哲学入門

購入者の感想

レヴィ=ストロースやデリダの没後、日本でもだいぶブームが鎮静化した気がする「フランス現代思想史」の入門書です。副題に示されているとおり、「構造主義からデリダ以後」のフランス現代思想がわかりやすく解説されています。
ちなみに、サルトルらの実存主義やメルロ=ポンティらの現象学、フランス以外の国の現代思想の解説はほとんどありませんでした。この本で扱われる主な思想家はレヴィ=ストロース、ラカン、バルト、アルチュセール、フーコー、ドゥルーズ=ガタリ、デリダです。あくまでもフランスの、いわゆる構造主義からポスト構造主義以後に論述の的をしぼった入門書だと思いました。このあたりの思想の基礎固めをしたい読者には最適の一冊だと思います。

この本の冒頭では、フランス現代思想のわかりにくさと理系学問の濫用が暴かれた「ソーカル事件」について説明されています。あと、構造主義やポスト構造主義という術語のあいまいさに気付かされるような論述もたびたびあります。フランス現代思想の難解な文体に魅力を感じていたり、構造主義やポスト構造主義という術語に明確な定義があると思っていたりする初学者は、読んでびっくりかもしれません。
巻末のブックガイドでは、フランス現代の思想書が著者別に初学者にも読みやすい順で紹介されています。誰の本をどんな順番でよめばいいのかわからない読者には、このブックガイドはとても有益だと思います。
フランス現代思想のわかりにくいところは正直にわかりにくいと言いつつ、読みやすい本を親切に教えてくれる著者の姿勢には、とても好感が持てました。

ボリュームの割にやたらと内容が豊富で読むのは簡単ではなかった。他の書評にもあるように、読者側に、相応の知識が前提にされている。著者は大変刺激的ユニークなヘーゲル論を書いておられて、とても参考になった印象が強い人だが、その人がフランスの現代思想を書くと言うので楽しみにして読んでみた。とてもいいと思ったのは、フランスの現代思想に対する距離の取り方で、鳥瞰するだけでなく内容的な部分にかなり入りこんでいるところが見事だった。ドゥルーズは、日本人の解説者はすっかりドゥルーズにいかれてしまった興奮して書いてしまい、そんな話なら昔からある話でちっともユニークじゃないじゃないか、と肩透かしを食うこと一再ならずだった。今回の解説でも私のドゥルーズに対する評価は上がらず、むしろ著者の「アンチ・オイディプス」に対する論述と評価は示唆に富んでいてまた我が意を得たものだった。デリダについても教えられることが多く、毛嫌いしていたが一つ読んでみようかという気はしただけでも本書の著述は見事。レヴィ・ストロースやフーコーは私個人は馴染みの作家だが、本書の論述は飽きることはなく示唆が多かったと思う。でも、総じてレヴィ・ストロースやフーコー以外は、なんというか、どこまで本気なんだろう、と思いたくなる奇をてらった思想家が多く、現代のフランス思想家というのはなじみ難いものが多い。

 フランス現代思想に関して日本では長い研究の蓄積があり、80年代のニューアカデミズムの流行以来、絶えず注目されてきました。しかし、レヴィ=ストロース、デリダ、ドゥルーズなど個々の思想家について研究した書物は数多く出版されてきましたが、構造主義からポスト構造主義、それ以後の現代思想について全体を俯瞰する書物はまだ刊行されていません。それを本書は実現しました。個々の思想家の思想を踏まえて全体を俯瞰するということは極めて困難なことです。それを著書はやり遂げ、フランス現代思想全体の見取り図を描いています。構造主義的思考はソシュールの構造言語学において発生し、人類学者レヴィ=ストロースによって提唱され、彼のサルトル批判によって明確化されたように通説では言われていますが、著者はそうした理解を斥け、レヴィ=ストロースの構造主義が、米国で出会った構造言語学者ヤコブソンの音韻論、ブルバキ派の数学、特に群論(クラインの4群論)の影響を受け、親族の基本構造を解明することにおいて形成されたことを指摘し、インセスト・タブー(近親婚の禁止)に関し、平行イトコ婚(母方の姉妹の子どもとの結婚)を禁止し、交叉イトコ婚(母方の兄弟の子どもとの結婚)を奨励する野生の思考についてクラインの4群論を適用して解説しています。

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