ガロア理論と表現論: ゼータ関数への出発 の感想

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参照データ

タイトルガロア理論と表現論: ゼータ関数への出発
発売日販売日未定
製作者黒川 信重
販売元日本評論社
JANコード9784535785892
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 数学 » 微積分・解析

購入者の感想

 本書は著者である黒川先生が雑誌『数学セミナー』と『数学のたのしみ』に書かれた記事に加筆された前半の四つの章と、新たに書き下ろされた二つの章及び付録「ゼータ学習法」からなる。書名は『ガロア理論と表現論』であるが、本書はこれらの理論の解説書あるいは概説書ではない。「ゼータ関数を研究する際に基礎となるこの二つの理論の重要性と有用性を読者が十分理解できること」、これが本書の最大の目的といえる。この目的に向け、ガロア理論と表現論の基本的な結果から、ゼータ関数研究に不可欠と考えられる必要最小限なものが厳選され、それら全てに極めて簡潔な証明が与えられている。

 数論に現れる表現として、「ガロア表現」と「保型表現」の二つが必ず挙げられるが、本書では前者に詳しく、後者には(本書で説明されていないアデールの導入が必要なこともあり)残念ながら殆ど触れられていない。そのため、各表現のL関数が一致することを主張する「ラングランズ予想」の説明が、お話程度にならざるを得ないのは仕方がない。これは頁数が限られた本書にアデールや保型表現の解説を盛り込むことによるバランスの悪さ、あるいは盛り沢山な内容による通読の困難さの増大、を著者が意識的に回避された結果だと思う。

 本書のハイライトは、新たに書き下ろされた第5章「ゼータ関数論」と第6章「絶対数学から見たゼータ関数論」の二つの章にある。

 第5章では、先ず代数体のガロア拡大の中間体のゼータ関数を誘導表現によって基礎体のゼータ関数に帰着させることが出来る、という「ゼータ関数の誘導定理」の説明が素晴らしい。次に、群の表現から構成される「ウイッテン・ゼータ関数」とその双対版ともいえる「群の共役類によるゼータ関数」の解説は、和書の成書に初出のものであり、興味深くとても面白い。この章の終わりのほうに「コンパクト位相群分布の素数定理」が述べてあり、これから「ディリクレの素数定理」と「佐藤-テイト予想」が同類の定理であることが分かり非常に驚かされる。

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