ラテンアメリカ十大小説 (岩波新書) の感想

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タイトルラテンアメリカ十大小説 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者木村 榮一
販売元岩波書店
JANコード9784004312963
カテゴリ文学・評論 » 評論・文学研究 » 外国文学研究 » スペイン・ポルトガル文学

購入者の感想

何ということもなく(たいして期待せずに)気軽に読み始めていきなり冒頭のボルヘスの『エル・アレフ』で衝撃を受けました。今までの読書体験、原文を読んだ時の感覚、いろいろなことがいっぺんに押し寄せてきて、一段高く階段を上って風景を俯瞰できているような不思議な感覚に見舞われています。イマジネーションの広がりを感じる本です。

ラテンアメリカ文学にある程度親しんできた者であれば、木村榮一の名を知らぬ者はいないだろう。著者は、日本におけるスペイン語圏文学翻訳の第一人者である。その木村氏が選んだ「ラテンアメリカ十大小説」は次の通り。

・ボルヘス 『エル・アレフ』
・カルペンティエル 『失われた足跡』
・アストゥリアス 『大統領閣下』
・コルタサル 『石蹴り』
・ガルシア=マルケス 『百年の孤独』
・フェンテス 『我らが大地』
・バルガス=リョサ 『緑の家』
・ドノソ 『夜のみだらな鳥』
・プイグ 『蜘蛛女のキス』
・アジェンデ 『精霊たちの家』

各章は、上記作品の一部引用で始まり、その作家のこれまでの経歴、作品についての小論、それ以外の代表作の紹介で構成されている。ちょっとした文学史ともいえるだろう。

若い人にも読んでほしいという著者の言葉からもわかるように、です・ます調で書かれた文章は非常に読みやすく、目線をあえて初心者に合わせているところが好ましい印象を与える。このことは入門書の基本であるといってよいかもしれない。また、ラテンアメリカ文学にとどまらず、他国語の文学についても言及され、その柔軟な筆致にぐいぐいと読まされる。例えば、フェンテスを論じた章では、さりげなく小川洋子の『博士の愛した数式』の話から始められていたりする。そのほか、司馬遼太郎、開高健、ラフカディオ・ハーンなど、日本人により馴染みのある名前を挙げながら、初心者が自然に興味を持てるような配慮がなされているところもすばらしい。

ラテンアメリカ文学のコアな読者であれば、物足りない部分もあるのかもしれないが、初心者の一人である私にとっては十分すぎるくらいの内容であった。個人的には、アジェンデの章の最後に、ちゃんとロベルト・ボラーニョについて触れてくれているのがうれしい限りである。

上に上げた10作品のうち、唯一フェンテスの『我らが大地』が未邦訳のようだ。非常に面白そうな作品である。近いうちに、著者による邦訳が出るのではないかという予感を勝手ながら持った次第。

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